第165話 ページ15
「改めて、宜しく」
ご飯を食べる手を止め、こちらを見る将斗さん。私もその様子に釣られ手を止めた。どう返すか一瞬考えたのち、
「こちらこそ、宜しく」
と頭を下げて言った。これが無難な返しだろう。将斗さんは返事を聞けて満足したのかまたご飯を食べ始めた。
宜しく、か、、、。私は改めてその言葉を頭の中で声にする。そしてニンマリとした笑みを浮かべた。好きな人と過ごせると思うと笑みを浮かべずにはいられないだろう。私はそんな小さな幸せをご飯と共に噛み締めた。
「何に笑って?」
どうやら、ニンマリと笑みを浮かべているのに気づいたらしい。私はなんとなく恥ずかしくなって「ンフフ、、、いえ、何も」と誤魔化した。が、
「何かあったから笑ってるんでしょ」
と言われた。恥ずかしいだけでバレたく無い事ではなかったので、「いやぁ、、、幸せだな、って」と答える。
「幸せ、、、か。たしかに幸せだよね」
「やっぱりそう思うよね」
「うん。、、、好きな人と暮らせて幸せだな」
彼の言葉を聞き、またニンマリする。今度は口元がだらしなくなってしまった。
「残りも早く食べちゃおう」
「そうだね」
◇
「ご馳走様でした」
「味、どうだった?」
「全部美味しかった」
「お粗末様でした。お皿は洗っておくからゆっくりしてて」
ゴム手袋をつけながら言う。しかしその手は止められた。
「俺がやるからAこそゆっくりしてて」
「、、、今、名前、、、」
「やるから」
「あ、うん。お願い」
名前呼びをサラリとされたが呼ばれた側は変な緊張をする。これは、私も呼び捨てで呼んだ方が良いのか。でもいきなり呼び捨ては抵抗があるな。、、、あ、そうだ。次呼ぶときは君付けに変えて見よう。
将斗君がお皿を洗っている間、テレビを見る。あまり面白い番組がなかったのでニュースにした。しばらくして、お皿洗いが終わったらしく隣に座った。並んでソファに座りくつろぐ。
「ありがとう」
「どう致しまして」
「お風呂、、、入る?」
何となく変な空気が流れ、変えようとしてそう聞く。将斗君も何となく同じ気持ちだったみたいで返答も「もう少し後で」と短かった。
「食べてすぐはキツイよね」
「うん。、、、ねぇ、抱きしめても良い?」
「、、、え、、、あ、いいよ」
いきなりのことで驚いた。まさか彼が言うなんて。私が良いと言うと横からキツく抱きしめられた。
「、、、好き、、、」
「、、、私も、好き、、、」
そう答えて横を向くと、フニと唇に何かが当たった。
「好き」
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音楽ガール(プロフ) - 作者さま!!さん» あ!本当ですね。外し忘れました。外しておきますね。教えて下さりありがとうございます。 (2021年9月17日 18時) (レス) id: c3c20d79e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:音楽ガール | 作成日時:2021年9月17日 17時