知らないは知っている

真っ白な心 ページ18

母「早く支度しなさい。間に合わなくなるなるわ
　よ。」

　朝から、元気だな。
　昨日は、年を取ると自然と落ち着いてくるわねって、テレビ観ながら言ってたのに。

彩「今行く!」

　ガヤガヤ…

　「やったー!合格してる!」

　「嘘…!やった。」

　「あ、あぁ…落ちた。」

　凄い人だかりだな…。
　私は、45番だから…

　嘘…

　落ちた…

　突然、今まで騒がしいと思っていた声が全く聞こえなくなった。

　目の前が、真っ白になっていく。

　何が駄目だった。

　出来たと思ってたのに。

　自己採点でも、良かったのに。


　心の底で、自我を必死に保っていたナニカが壊れた。


　フッと、気が抜けて足に力が入らず、その場に座り込んでしまった。

　普段なら、汚いから、こんなことしないけど今はそれどころではない。

　もう何も考えられない。

　体中が麻痺したみたいに、ただ呆然と座っていた。

母「…や、あや、彩!」

　ママの言葉で、ハッとした。

　もう、合格発表の紙は剥がされていて、ほとんど人は、残っていなかった。

　ママは、心配そうに顔を覗き込んでいた。

母「結果は、どうだったの…?」

　私は、出来るだけ何でもないような顔をして、口を開いた。

彩「ごめん。ママ、落ちちゃた。」

　すると、ママは一瞬顔を強張らせたが、すぐに笑顔になった。

母「残念だったわね。でも、もう終わったことだ
　し、仕方ないわ。」

　多分、ママは励まそうとしてくれたんだと思う。

　でも、私にはまあ、貴方はその程度でしょうねと言っているようにしか聞こえなかった。

　

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