No.009 ▽ ページ9
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目が覚めてむくりと上体を起こし時計で時刻を確認する
6:30
先月から隣にお店がオープンしていた
名前はMasion fleurie 。今はフランス語で【花の家】というらしい
店主は俺より一つ下の女の子
大学生なのかと思ったが夢である花屋を早くオープンさせたいとのことで短大に通ってたそうだ
最近のルーティーンは早くに起きて店の前で日光を浴びながら隣の店主、Aちゃんと30分程度会話をすること。そしておにぎりと花を交換すること。
何気ない毎日だけどそれが楽しかった。
そんなルーティーンができなかった今日
昨日の夜からアイツが来ていたからだ
「 なあサム、腹減った 」
「 は?ツムお前俺のプリン食ったやろ 」
「 名前書いとらんやん 」
「 俺の家や 」
「 知らん、お前の物は俺の物や 」
「 ジャイアンかよ 」
「 喧しい 」
近くでチームの飲み会があったらしくて終電に間に合わず俺の家に泊まりに来た片割れの侑
あーあ俺の朝の癒しが今日は無いわ。
最悪。帰れやコイツ
「 そういや知らん内に隣に店入ったんやな 」
「 先月から入っとるで、 」
「 どんな店?飯?居酒屋? 」
「 花屋 」
「 花屋ァ???このご時世珍しいなあ 」
「 せやな 」
「 何やお前冷たいな 」
「 俺はお前が早く帰れと思っとんじゃ 」
ムシャムシャと作り置きしていたおにぎりがツムの胃の中にどんどん飛び込んでいく
中にはAちゃん用に使っていた柴漬けおにぎりでさえも
コイツほんま見境いなさ過ぎん?
「 女の子なん? 」
「 何がや 」
「 隣の店や、花屋言うくらいやから女の子やろかと思て 」
「 せやで、お前は近づくなよ 」
ツムが聞いてくるから少しムカッとした。
あの子と仲良く喋っていいのは俺だけや
絶対コイツにとられてたまるか
ふと、そんな感情が心の中に顔を出してきた
今まではそんなことなかったのに
「 サム? 」
「 お? 」
「 いきなり止まってなんかあるんか 」
「 なんもないわ 」
顔洗ってくる、と片割れに伝えれば、おん、と返ってくる小声
ツムにバレないように一階に降りてガラス張りの窓を見ると今日もAちゃんが外の椅子に座ってぽかぽかと朝の日差しを浴びていた
可愛いな、なんて感情が心の隅にぷくりと浮き上がる
海月のように小さな感情だけど、それでも愛でたいと思ってしまうのは罪だろうか。
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仔犬(プロフ) - ゆうさん» 温かいお言葉有難う御座います!また今描いている作品が落ち着いたら続編出そうかななんて思ってます(^^)v気長に待っていただければ幸いです (2020年5月9日 22時) (レス) id: 8b2aa36d50 (このIDを非表示/違反報告)
仔犬(プロフ) - 彗。さん» 有り難いお言葉有難う御座います!キュンキュンしてもらえてなら幸いです!(`・ω・´) (2020年5月9日 22時) (レス) id: 8b2aa36d50 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - すごく素敵な作品で一気に読んでしまいました!その後とか続編とかあったらいいなって思います。大好きです! (2020年5月9日 21時) (レス) id: b97f6377b3 (このIDを非表示/違反報告)
彗。(プロフ) - とても素敵な作品で読んでいてキュンキュンしました笑 完結おめでとうございます。 (2020年5月6日 20時) (レス) id: 6c56bd37ca (このIDを非表示/違反報告)
名無し39526号(プロフ) - 黒瀬さん» 優しいお言葉ありがとうございます!( ; ; )更新頑張ります! (2020年4月23日 23時) (レス) id: 8b2aa36d50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:仔犬 | 作成日時:2020年4月16日 21時