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inside
どれくらい眠っていたのだろうか。
目が覚めた時には隣にいたはずの大ちゃんがいなくて、キョロキョロと周りを見渡してみるも誰もいない。
「なぁんだ、1人かぁ」
なんて独り言にしては大きい声で言いながら、ソファの背もたれによしかかる。先程、と言っても寝る前までは賑やかだった楽屋も今じゃこんなにも静かになるもんだから、思わず身震いをした。
俺の撮影はもう終わっているしあとは帰るだけなんだけど、何故か動く気にはなれない。
明日はお休みだから何もすることは無いし、スタッフさんの邪魔になるかもしれないけどあと少しだけここに居座っちゃおうか。
なんてことを呑気に考えながら欠伸をすると、がチャリと背後のドアが開かれる音が聞こえ、振り返る。
そこに居たのは、
「あれ、伊野ちゃんじゃん。まだいたの？」
大ちゃんと話していた人物、山田だった。
「珍しいね、こんな時間まで残ってるの」
「んー、寝ちゃってて。大した用事もこの後は無いし、ちょっとだけここに居座ってようかなぁって」
「へぇ」
沈黙。
そこまで喋らない俺たちだからこの沈黙は少し気まづい。ゴソゴソとなにやらバッグの中を漁り出す山田を横目にやっぱりそろそろ帰ろうかな、と考える。
俺よりも一回り、二回りと小さい背中を視界の端に捉えて、目を細める。
こんなに小さい体でいつもなにを受け止めてんだろ。
絶対エース、なんてそんな大きい肩書きを背負って俺たちの先頭を走る山田は、年下ながらすごいと思う。俺だったらできない。みんなを支えることが出来るか危ういし。まぁ、ちょっと面倒くさいなと思うところもあるけれど。
「じゃ、伊野ちゃんお先」
「んぁ、山田これから仕事？」
「うん、有難い事に新しいドラマの主演やらせてもらうことになったんだ」
「へぇ、すごいね。さすが」
「伊野ちゃんもすごいじゃん。負けてらんねぇなって思ってさ」
「…そっか。……ねぇ、山田」
「ん、なに？」
「…行ってらっしゃい」
出ていこうとする山田をみながら、なんとなくここで終わらせちゃいけないと思い、呼び止める。
普段は言わないようなことを言って山田を見つめると、少し嬉しそうに目を細めながらふは、と笑い声を漏らす。
「ん、ありがと伊野ちゃん。頑張れる気しかしないわ」
「おー、頑張れ」
所謂王子様のような笑顔を俺に向けてドアを閉める山田。
ふぅ、とため息を漏らしながら背もたれに全体重を預けて目を瞑る。
「やっぱ、眩しー…」
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作者名：夢雨 | 作成日時：2020年3月19日 2時
