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(零side)
零「お邪魔するぞい」
『どーぞ。』
零「相変わらず殺風景な部屋じゃのぅ。」
Aはリズムリンクに入所してからすぐにES付近の
アパートに引越しした。
部屋には4人掛けのテーブルと椅子。
生活最低限に抑えた家電。
Aの部屋には実家から運んできたであろう
年季の入ったアップライトピアノが置いてあった。
あとはアコースティックギター、電子ピアノ、PC機材など
作曲に使う楽器などが無造作に置いてある。
ひとつ殺風景じゃないものを挙げるとするのなら
大きなオーブンレンジくらいかのぅ。
『いいんだよ。生活できてれば。』
彼女はそういう。
零「それもそうじゃの。」
『ノアール、出ていいよ。』
猫「ナァン♪」
猫はケージから出てすぐさまAの足元に
擦り寄った。
『寂しかったね。ごめんね。』
零「海外には猫は連れて行けんから難儀じゃのぅ。」
『そうなんだよね。連れて行ってあげたいな〜
そうしたらこの子に寂しい思いをさせなくてすむから』
Aは優しく黒猫のノアールに微笑んだ。
優しく慈悲深いところが好きじゃ。飾らぬ姿も愛らしい。
Aの好きなところなら幾つでも挙げられる。
下手したら山手線ゲームが出来るほどにの。
我輩はAを虜にするつもりでおるのに、
虜にするどころか更に落とされて骨抜きにされておる。
本当にAには適わぬな。
『ねぇ、零くん。』
零「なんじゃ」
『ご飯まだ食べてないよね?』
零「あぁ、食べておらんよ。」
『食事制限とかはしてないかな?』
零「しておらんよ。今はまだ大丈夫じゃ」
『じゃあ、零くんが好きなミートパイでも焼こうかな』
零「クク♪我輩の好きな食べ物を覚えておったのか。」
『うん。覚えてる。全部ね』
零「パイや焼き菓子はお主の得意料理だから、
我輩、好物なんじゃ。」
『それは嬉しいね。小さい時からおばあちゃんに
教わった甲斐があるね。』
零「じゃあお願いするとしようかの。」
『じゃあ座って待ってて、あ!その間ノアールの
相手でもしてあげてて!』
そう言って腕に抱いておるノアールを我輩の腕に
移す。
零「わかった。ほれ、ノアール。我輩と遊んでおくれ」
そうノアールに呼びかけるとご機嫌に喉を鳴らした。
その間Aは手際よくパイを作っていく姿を
ノアールとふたりで眺める。
これは将来いいお嫁さんになるのぅ。
まぁ、ぬけぬけと他の男の元に嫁がせはせんけども。
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作者名:Chloe | 作成日時:2022年9月25日 23時