あんスタ【もう1人の転校生】3 (ページ15)

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第94話ページ15

次のTricksterの対戦相手は、Ra*bits。

そのライブ会場を通りすぎ、ある場所へ向かっていた。

ガーデンテラスだ。

赤い薔薇に囲まれながら、儚げに俯く少年が一人。

貴｢氷鷹～！｣

後からジャンプして抱きつく。ぼーっとしていたのか、オーバーなリアクションで、彼は振り返った。

身体を離し、元気にしてた？と問う。だが、相手はまた同じように顔を下に向けてしまった。

一度、名前を呼ぶ。顔をあげない。だから、強く名前を呼んだ。

肩を揺らして、反射的に顔を上げる。

あたしの顔が、恐ろしく怖かったので逃げ出したかったと後で聞いた。

それほどまでに、怖い顔をしていたのだろうか。

いつもより低い声音で、

貴｢あんたがどこに行こうが誰も止めない。それでも、明星がTricksterでありたい理由は、わかるでしょ？｣

氷鷹｢…｣

貴｢執着してるって思われるかもしれないけど、明星は信じてる。みんな、帰ってきてくれると｣

一人では無かったからこそ、立ち上がれたのだ。

貴｢明星は、止めたりはしない。でも、行った先で苦しんでるなら、許せない、そう言っていた。氷鷹の席を開けて、みんな待ってるんだよ｣

唇を噛んで、ワナワナと震える彼。顔を上げて、前を見なさい。と、言った。

幻想的な空間で、美男美女が言葉のない会話をする。

音が消えて、戻った。あたしが、口を開いたからだ。

時間が無い。