あんスタ【もう1人の転校生】9 (ページ5)

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第82話ページ5

時計は深夜2時を回っていた。

何も映らないリビングのテレビをソファに寄りかかって見ている。

あたしの抱える足元で桜が鳴いた。つぶらな瞳がこちらを見上げている。撫で撫で。

あたしはミウラが怪我した時、どんな行動を取ったのだろうか。覚えていない記憶に胸が痛む。

違う。今あたしのすべき事は思い出すことではなくやるべき事をやることだ。

両頬を挟むように叩いて気合を入れる。その音に驚いて桜が腰を浮かせた。にやっと笑って、あたしは寝室に行き暗闇に意識を落とす。

貴｢おっはよー！！｣

今日もいつもと変わらず、挨拶。廊下にいる他の科の生徒。先生に、クラスメイト。

瀬名｢A｣

貴｢おはよ！瀬名｣

隣の席の瀬名もいつも通り、いる。守沢があたしの肩を組み、羽風も背後から現れた。

斎宮の腕の中には今日も可愛いマドモアゼル。蓮巳は相変わらず真面目にプリントをまとめていた。あたしの視線に気づいた天祥院が微笑んで手を振る。笑い返した。

瀬名｢あんた、大丈夫だったの？｣

貴｢ん？うん！OXが脱走したらしいけど…無事に見つかったよ｣

安堵のため息をつきながら微妙に笑うあたしに瀬名が優しく微笑んで良かったじゃんと一言。

その言葉に大きく頷いて、水色のリストバンドを見た。

OXの言葉を理解できないまま、静かにその記憶を溶かして消していくのだ。