第108話 ページ31
OX｢…｣
青井｢どこにいっちゃったんだろ…｣
赤井｢もしかして、また七瀬がっ｣
控え室。嫌な想像をぶち壊すように、OXがペットボトルを握り潰して床に叩きつけた。その音に驚いて、2人が身体を大きく揺らす。
OX｢可能性はあるが…この件に関してはAに言うな｣
青井｢な、何でですか？｣
OX｢…今、Aの兄貴は入院中。弟までいなくなったと分かれば、あいつを支える糸はもうすぐ切れちまう｣
OXが暴行にあい、兄が事故にあい、守はいなくなり、最愛の友人が死んだ。
OX｢気配り見配りするだけでも精神削ってるはずだ。余計にストレスとか責任抱え込ませちゃ、今度こそあいつは精神を壊す｣
それは、ミウラと同じ道を辿ることになる。
OX｢ミウラも誰かに頼ることはあまり無かった。Aは余計に無い。自分の腹ん中で抱え込んで悩み込んで…｣
去年。まだ寒い冬、春の兆しすら見えない、最初と最後を繋ぐ冬のドリフェスを終えて数日後。
運ばれて行ったミウラ。赤く染まった身体。呆然と立ちすくむあたしたち。
OX｢あの後、Aは情緒が安定しなかった。動くことによって他人の希望を奪ってしまう申し訳なささと、成功させなければならないという緊張、仕事のプロフィールやファンに対しての対応…｣
責任も、罪も、何もかもを背負わせてしまった。
ただでさえ、Aの名を出し死んでいった身勝手な野郎達もいるのに。
ミウラの死は、一度、心を壊した。
OX｢…｣
青井｢先輩っ、アナウンス…｣
招集のアナウンスだ。
OX｢うちがいく。2人はここで蓮の帰りを待て｣
赤井｢あの｣
OX｢なに？｣
赤井｢A先輩は、どう…なったんですか？｣
OX｢…………答えは、あいつの体にあるよ｣
深く深く傷ついた彼女の罪の意識は、今もなお、約束の印に刻まれている。
観客席、ドキドキの結果発表。
あたしは強く、リストバンドを握りしめていた。
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月25日 10時
