第81話 ページ4
OXが消えたと聞いて一つだけ思いついた場所があった。すぐに浮かんだ場所だ。
小さい頃から一緒にいた場所。
あいつが死ぬ前に集まった場所。
秘密基地のように、大切な場所。
貴｢はぁ…はぁっ…はぁ、｣
緑が生い茂った大木のある大海原が見える丘。春は桜が咲き誇り蝶が舞い、夏は涼しく潮の香りを感じ、秋は銀杏と紅葉に包まれ、冬は雪解けの氷柱がオーロラのように木々の枝に吊れる。
何をするにも一緒で、何をするにもこの場所だった。
ミウラが見つけてくれた、あたしたちの宝物。
今は秋、風で紅葉と銀杏が交互に踊っている。包まれるようにOXは佇んでいた。木を見上げ、赤髪が光りながら靡く。
細長い手足に巻きついている少し汚れた包帯。
振り返った緑色の瞳は翡翠。
赤と黄色の絨毯の上を歩く。木の葉の落ちる音楽に合わせながらあたしたちは向かい合った。
貴｢何してるの。病院に戻らなきゃダメでしょ｣
OX｢ねぇ｣
OXのいつものハスキーボイスは余計に枯れているようだ。そう、秋の葉のように。
OX｢ミウラが死んだ時、あんたどうなったか覚えてっか｣
貴｢あたし？｣
学園についた時、呆然と立ちすくんだ。横で真っ赤なマントを羽織ったミウラが通り過ぎていった。
救急車の音が遠のいて、蓮が涙を流してOXが唇を噛み締めて守は地面に拳を打ちつけた。
あたしは…。
貴｢あたしは、何を……？｣
OX｢…一つ、言っておく｣
OXがあたしの肩を掴む。
その手は震えて力強かった。
OX｢何があっても乱れるな。やりのけろ。お前に託された沢山の夢を叶えてやれ｣
なんで今そんなことを言っているのか分からなかった。
OX｢お前には今、重い責任と荷を背負わせてる。分かった上で、うちのワガママを聞いてくれ｣
右手のリストバンドをOXは強く握り締めた。その手首を引いて、自分の胸にあたしを抱きしめる。
OX｢辛い時は逃げてくれ。苦しい時は寄りかかってやれ、頼れ。お前を守る騎士は、今もお前の傍にある｣
これは、誰のことだ。
OX｢ミウラが出来なかったことをお前が繰り返すな｣
あたしを支える柱が少しずつネズミによって齧られていく。
その音が耳に直接聞こえた。
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月25日 10時
