第88話 ページ11
貴｢あ、クレープ食べたい｣
瀬名｢クレープぅ？｣
明星｢あ！A〜！！｣
そのお店はどうやら、2年A組がやっているようだ。お日様のような暖かいオレンジ色の髪を今日もふわふわと揺らせた明星と、
瀬名｢ゆぅくーん！｣
遊木｢ひっ！？｣
メガネがクレープの生地で少し汚れた遊木が、明星の背中に隠れて迫ってくる瀬名に備えた。
やれやれという気持ちでお店に近づく。明星は遊木と瀬名に挟まれて複雑な表情だ。メニューを見て、あたしの好きなキウイフルーツの入ったクレープを頼む。
貴｢ほら、瀬名も決めなよ｣
瀬名｢俺？う〜ん…俺は、オススメでいいや｣
それよりもゆうくん出てきてよ〜と猫なで声。なんだよ。こんな時もゆうくんかよ。
明星｢はい！Aのぶんと、そこのワカメさんのぶん！｣
両手に手渡され、ありがとうと自分の分を
貴｢ほら、瀬名行こうよ｣
あたしの言葉は無視。ゆうくんモードに入った瀬名に他の声は届かないのだろう。
むっとして、あたしは瀬名の腕を引っ張り自分に抱き寄せた。少し身長が伸びたか、見上げる視線は出会った時に比べて少し高い。
なにぃ？と不機嫌な瞳があたしを上から睨む。下から交戦し、
貴｢…今日は、一緒にいてくれるんじゃないの｣
頬を膨らませ、あたしは瀬名の腕を離して歩き始めた。も〜瀬名の分も食べちゃうもんねと吐き捨てて。
瀬名｢ちょっ…じゃあね！ゆうくん｣
消えそうなあたしの背中を追って、瀬名はその場を離れる。安堵の息を吐いた遊木は、エプロンでメガネのレンズを拭いた。
お客さんが現れ、注文しているが手が止まっている明星に遊木が肘でつつく。どうしたの？と声をかける。
明星｢Aとワカメさんって、あんなに仲良かったっけ？｣
遊木｢仲は良かったと思うよ…？でも、それ以外が感じられる気もするけどね｣
そう笑った遊木の表情には、昔の面影はなく純粋に、綺麗な微笑を浮かべていた。
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月25日 10時
