第78話 ページ41
首根っこを掴み、守は男子生徒をレッスン室から引きずり出す。扉をバン！！と閉め、鍵をかけた。
月永｢ごめんなさい！ごめんなさい！！｣
頭を抱えて泣き叫ぶ王様。必死に朔間弟や鳴上が宥めるが暴れ周り、謝罪の文を叫んでいる。目からとめどなく涙を流し、月永の全部が恐怖を訴えている。
バラまいた楽譜をぐしゃりと握り潰し、笑った。涙を流しながら笑っている。普通じゃない状態に誰もが真っ青になる。
月永は自分の親指を噛み黒に赤を描いていく。楽しそうに、それはもう哀しそうに。
守｢…｣
朱桜｢Leader！！やめてください！｣
後ろから抱きつくように腰に手を回した朱桜を振り払う。月永は目を血走らせ、楽譜に赤を創っていく。
何度も朱桜は月永を抱きとめた。腕の中で暴れる月永を必死に抑える。
守｢…｣
月永に歩み寄り、血が出ている親指を手に取った。理解できないと月永が動きを止める。止めようと腰に抱きつく朱桜も目に涙を溜めて守を見た。
守｢…｣
自分よりも小さな手から血は流れる。それは指を流れ守の手にも滲ませた。
鉄の匂いと生温い温度、冷たい手。昔の彼女を月永に重ねた。
守｢…だい、じょおぶ｣
誰もが初めて聞いた声だ。
守｢だ、じょーぶ。こあ、くない｣
守の大きな手が月永の頬を滑り両耳を塞いだ。月永の耳には、守の身体を流れる血液と心臓の鼓動がドクンドクンと打っている。
不思議と、その声は鮮明に聞こえたのだ。
守｢大丈夫。大丈夫…逃げるのは恥じることじゃない。過ちを再び繰り返さない覚悟が大切なんだ｣
月永｢A…？｣
微笑んだ顔は、確かにあたしとそっくりだったのだ。
貴｢守るよ。だってあたしも騎士だもん。だから、王様。あたし達に、戦う勇気をちょうだいね｣
共に戦う意志を魅せてね。
守｢一人で抱え込まず、傍にある剣をしっかり握って立ち上がれ｣
月永｢っ｣
涙は、流れるのをやめた。
朱桜(震えが、おさまった？)
なんのために帰ってきたのか。
それは、もう一度闘うためだ。
Knightsとして、騎士として、今度こそ勝利の旗を掲げるために。
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作者名：�� | 作成日時：2017年7月9日 0時
