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絶対的至上対象 ページ36

走る。


日が暮れて一面暗くなった道を、


ただひたすらに、走る。




「(時間がこんなに経ってたなんて……

わたし、なにも考えられてなかった…)」



息が切れそうだ。


喉の奥が痛い。



「(生和、炭治郎さん達…大丈夫かな)」



脳内にこびりつく、生和たちへの不安。



「(大丈夫…今はとにかく帰らなきゃ)」



左手に、託された懐中時計を固く握りしめる。



今度外に出た時、また産屋敷へ行こう。


そしてまた生和に会ったら、何も言わず帰ってしまった事を謝ろう。



「大丈夫…
生和は時柱だし、すごく強いんだから」



不安をかき消すように自分に言い聞かせ、走る足を早めて行った。



ーーー


無「……!! A」



無限城。



「はあ………はあ…………



た、だい、ま、戻……まし、た」



こればかりは笑えるような話だが、わたしは走り過ぎで即座にその場で気絶してしまった。



無惨さんの腕の中に落ちて行くような感覚がしたのを最後に、意識は暫く途絶えた。



ーーー



目が覚める。



「……ぁ」


無「…御帰り、A」



視線の先にはーーー無惨さん。



瞳を一周回せば、
寝台に横になっているわたしのそばに彼がついてくれている…という状況を把握出来た。



「…あの、ごめんなさい………」


沢山謝ろうと思っていたけど、頭がパンクして言葉を引き出せない。



すると彼は一瞬目を見開いたが、それをすぐ伏し目にした。



無「何を言っている。

私がもっと気を配っておくべきだった…済まない」




彼が発した言葉は、驚くべきものだった。


ここに来たばかりの時、(再生するとは言え)童磨さんの首を躊躇なく撥ねた彼が。


わたしには、こんなに優しい…………




「無惨さん………

…無惨さんは、どうしてそんなに優しいんですか?」


こんなに優しくされた事がなくて、ついそんな事を聞いてしまう。


けど無惨さんはそんなわたしを決して嘲らない。



無「私にとって、おまえが全てだからだ……
A」




何処にも行かせまいと言っているかの如く、彼の重く甘い声が落とされた。

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作者名:スイ | 作成日時:2020年1月25日 22時

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