ひかりふる【鬼舞辻無惨】 (ページ37)

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遠い庭ページ37

それから半年が経った。

「(…髪、全然伸びないな)」

無惨さんの部屋で、ぼんやりと千代紙を折りながらそんな事を考える。

あれから、産屋敷に行けていない。

あれ以来無惨さんがわたしを心配して『夜になったら一緒に買い物に行く』という約束をする事になったから行くに行けないのだ。

ましてや、無惨さんと鬼殺隊は相容れない存在だから…尚更。

「(生和………元気かな)」

部屋着に降格した制服のポケットにいつも忍ばせている懐中時計。

ふと取り出して、真ん中の『壱』という漢字をまじまじと見つめてみる。

「……」

ｶﾞﾗﾗﾗﾗｯ

障子が開く音で無惨さんが帰ってきた事を悟り、彼の方を向く。

無惨さんは世を忍ぶ仮の姿として、人に化けてお仕事をしている。丁度その帰りだ。

無「A ただい…

………!?」

「おかえりな…さい…??」

(何かに驚いてる……??)

彼の視線の先にはーーー

無「A……

A……!!その時計を、いつ何処で見つけた!?!?」

わたしが手にしている懐中時計を目にし、柄にもなく興奮気味の彼。

「え……えーと………

こ、この前……??」

そう言えば、無惨さんはこの時計を見てなかった。

普段見せることの無い表情に動揺してしまったけど、

生和から託された……だなんて口が裂けても言えない。

無「……した」

「え」

無「でかしたぞA!!」

「(で、でかした…!?)」

ーーーーー

無惨さんが青い彼岸花を見つけるにあたって今有力な候補は、

『未来へ行く事』だそうだ。

過去にも現在にも手がかりがないから、というこの目的の発端をたった今聞かされた。

…そして。

無「昔学書で読んだ情報だが
この懐中時計は…時渡りの能力が備わっている

…私がいつか太陽を克服したなら、共に夜明けを眺めよう」

そう言う彼の横顔からは、太陽を克服する事への切なる願いが見て取れた。

無「A、共に未来に行こう」

無惨さんは、優しい顔で言った。

〝Aに託したいんだ〟

〝大切な時に使って〟

〝僕じゃ変えられないから、未来も過去も〟

無惨さんには、太陽を克服して欲しい。

わたしの大切な人の望みは、同時にわたしの望みでもある。

はじめてわたしを受け入れてくれた人に、わたしはどこまでもついて行きたい…!!

「…はい、喜んで!!」

そして、未来のために意識はまた暗転する。