4話 ページ4
「冬桜って言うのは、花の名前。
私の故郷の花」
Aの故郷は確かひとらんと同じ東の国だ。
前にひとらんが「俺の国には綺麗な花がたくさんあるんだ」なんて言っていた気がする。
「桜ってね、普通は春に綺麗に咲いて、見る人みんなを魅了するの。
だけど、冬桜は春じゃなくて冬に咲くの。
白い雪にピンクの花が映えてとってもきれいなの」
Aは懐かしそうに言葉を紡いだ。
きっと、それはそれは綺麗な花なんだろう。
「そして、冬が終わったら一度枯れる。
でも、冬桜は二度咲く珍しい花。
春になると、また花を咲かせるの。今度は冬よりも大きくて鮮やかな、たくさんの花を咲かせる。
冬も綺麗だったけど、春にもう一度咲くときは、もっともっと綺麗に咲くの」
二度咲く花なんて、初めて聞いた。
そんなすごい花があったんだ。
「これは、きっとシャオロンも同じ」
交差しなかった俺たちの視線が、カチッと合わさる。
「今が冬の終わり頃で、元々咲いていた花が一度休憩に入ったところ。
今よりもっと綺麗に咲くための準備中。
そして今度は、この怪我を治して春の大きくて綺麗な満開の花を咲かせるの。
前よりもさらに強くなって、もっとかっこよくなる。
だから、今は不安になるんじゃなくて、希望を持って怪我と戦うの。
何事も、まずはやってみなきゃ分からないでしょ?」
Aの言葉が、強く胸に響いた。
フユザクラと同じように、俺ももう一度満開の花を咲かせてやるんだ。
『そう、やな。
…そうやな!何もせんで不安がってたって治るもんも治らんな。
俺、この怪我治して今よりもっと強くなるわ!満開の花咲かしたるわ!』
「ふふ、シャオロンはそうでなくちゃ」
俺たちは希望に満ちた笑顔を浮かべた。
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作者名:煽田 -アオタ- x他1人 | 作成日時:2020年4月5日 18時