2話 ページ2
目を覚ませば蛍光灯の強い光が俺の目を貫く。
目が慣れてきて、ここが医務室であることに気づいた。
『ぁ……俺。』
「あ、目覚めた？」
先程まで閉じられていたカーテンがシャッ、と音を立てて勢いよく開かれた。
顔を覗かせたのはぺ神だった。
『…そうだ。足』
途切れる前の記憶が脳裏に浮かび、右足に意識を向けると、思い出したようにズキリと痛み出した。
思わず顔がゆがむ。
でも倒れたときよりかはだいぶマシな痛みだった。
「これから足の説明してもええ？」
『ああ、大丈夫や』
ぺ神はデスクからカルテを取り、口を開いた。
「まず、キズはちょっと深めだけどシャオちゃんなら1、2週間で治ると思うよ」
ほっとするのもつかの間、ぺ神は「でも、」と続けた。
「場合によっては後遺症が残っちゃうかも。
後遺症が残っちゃうと、今までみたいな軽やかな動きができんくなったり、前線に出られんくなるかもな」
その言葉を聞いて絞り出せたのは「は……？」という声かも怪しいほどの小さな掠れ声だけだった。
「そういう可能性もあるってだけで必ずそうなるわけやないよ」
だとしても、俺は人生で大怪我と呼ばれる怪我を一度もしたことがない。
そんな強い体に自信を持っていたのに、そうでなくなるかもしれない、という状況に突然立たされてしまった。
一抹の不安が津波のように勢いよく脳をかけめぐる。
このまま、前線に出られなくなってしまうのでは、と考えると世界がどんどん絶望の色に変わっていく。
と、そこへ医務室の扉が静かに開き、珍しく眉を下げたシッマが入ってきた。
彼には不安を見せてはいけないと思い、無理矢理にでも笑顔を作った。
「シャオロン」
『なんやそんな顔して、すぐ治るから！お前は俺に負けんよう稽古しとけ』
せっかく茶化してやったのに、シッマは困ったように笑った。
自分のせいだとでも勘違いしてるのだろうか。
それとも、もう右足の話を聞いていて、同じように不安がってくれているのだろうか。
どっちでも、今のシッマには必要ない。
この怪我は、俺の失態。シッマが気にすることじゃない。
「すまん、これからトントンにレポート出さなあかんねん」
『おう、全然ええで。
早く行かなトントンに粛清されてまうで！』
「せやな。じゃまた来るわ」
シッマは、始めに入ってきたときより、幾分かマシな顔になって出ていった。
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作者名：煽田 -アオタ- x他1人 | 作成日時：2020年4月5日 18時
