【d!】仮初の言葉でも (ページ7)

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1幕5場ページ7

「そうだな､､､オーディションはエチュードにしようか」

エチュードか､､､特に苦手な分野だ

エチュードというのは即興劇とも言われる

名前の通り台本なしのアドリブで演技をするものだ

「お題は───そうだな。愛の終わり」

随分と面倒そうなお題が来たな､､､

しかも相手は鬱さんらしい

「よろしゅうな〜ハナちゃん」

へらへらと笑う鬱さんと鋭く目を光らせるほかのメンバー

そしてグルッぺンさんが口を開いた

「───よーい、はい」

パン、という手拍子とともにわたしは息を吸う

そして役に入り込んだ

『､､､ッ貴方っていつもそう！』

瞳に涙を浮かべて喉を絞り鬱さんを睨む

後ろの方でほかのメンバーが驚く雰囲気がしたが気にしない

鬱さんは少し戸惑ったもののすぐに体制を整えて反応してきた

「違う、ハナちゃん、ね、僕が愛してるのはハナちゃんだけなんよ」

焦ったように言葉を重ねる鬱さんはやはり演技が上手い

､､､負けてられない

『､､､本当？』

荒々しい演技から一変、縋るような表情で鬱さんを見つめる

「ほんとやでハナちゃん、ハナちゃんだけが好き、大切」

それに呼応するように甘い声で返してくる鬱さん

───予想通りの反応をありがとう

『､､､じゃあ一緒に死のう？』

わたしは満を持して口を開きそう言った

彼の首にそっと手をかける

鬱さんの声よりもっと甘く溶けそうな声を出して

目にはありったけの蕩けた愛を乗せて彼を見る

「､､､」

彼は額から汗を垂らしてこちらを見た

すると瞬間グルッぺンさんがもう一度パンと手を叩いた

「､､､エチュード終了だ」

ふう､､､久しぶりに実力のある人と演技出来て楽しかったな

自分は完全に相手の芝居に飲まれてたけど

もっと練習しなきゃだめだな

『､､､じゃあ帰ってもいいですか』

無言のままのグルッぺンさんとぽかんとしているほかのメンバー

早く帰らせて欲しい

「いやダメでしょ､､､入ってよ我々に」

え？

そう言ったのは鬱さんだった

彼はまだ演技を続けているのか冷や汗を垂らしている

もうエチュードは終わったのに

とりあえず冗談はいいから帰宅させて欲しい

用事があるからと嘘をつくとグルッぺンさんはすぐに解放してくれた

､､､明日もここに来るという約束付きで

とりあえず今日は帰れるらしいし良いか