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ｰ夏頃ｰ
「うー、日本の夏は暑いなぁ？はやくスオ〜たちと合流しよう、セナ。この暑さには敵わん！」
「珍しくまともなこと言うじゃん、れおくん。…で、今回は会えそうなの？」
「うーん、いや？なんだか忙しいっぽい。丁度夏休みに入ったのに、帰って来れないって言ってる！」
空港に隣接された駅のホームで、暑さに耐えつつ「ほらっ」とセナにおれのスマホ画面を見せつける
「スマホ落としてないのも珍しい」と驚愕するセナ。
表示されたトーク画面には『有難いことにピアノのお仕事貰ってて今シーズンは帰れないかも』という何とも端的な文章
あいつだったら結構マメに、しかも聞いてもないこともご丁寧にお知らせしてくれるんだけど、それを知ってる側からしたらこのトークは本当に端的なものだ
「へぇ、忙しいんだ。あの子。まぁ…アレだけの実力があれば当たり前だよねぇ。」
「うんうん、その素晴らしさはおれがいっちばん最初に知ってたんだけどな！あいつは将来偉人になる！なんたって可愛いしなっ！」
「否定はしないよ」
「うわっ」
話に終着点が見えたところで示し合わせたかのように電車がホームに入ってくる
それと同時に、セナはおれに帽子をバフ！っと被せて、「ちゃんと忍んでよねぇ」と呆れ顔で言った。
「(仕事…仕事かあ。ピアノの…うん、
「ちょっと今はやめて！」
電車に乗り込んだところで中はそこそこに満席で座れる余裕なんか無さそうで。
窓際に立って空を眺めながら、あいつの事を考えていたらちょっと寂しくなったのがいい刺激になったらしい。
すぐさまポケットからペンを取り出したら、セナが思いっきし腕を掴んできて小声で耳打ちをしてくる。
こしょばゆいっ！
「ほら、これあげるから。静かにしててよねぇ。」
「お、メモ帳だっ。ありがとう、セナ！」
流石に公共交通機関である電車の壁にペンを走らせるつもりは無かったけど、折角だから有難く使わせてもらおう
ふんふふーん♪と小さく音を刻みながら、サラサラとペンを走らせてドンドン空白を埋めていく。
「次、降りるよ。」
「えっ、もう？もうちょっとダメ？」
「ダメに決まってるでしょ。続きは後にしなよねぇ。」
小言を漏らすセナに「ぶーぶー」と抗議をするも、それは虚しく呆気なくセナの手刀で終わってしまう。
仕方ないのでペンをポケットにしまい、また空を眺める。
「…あいたいなぁ。」
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作者名：なこ | 作成日時：2023年1月29日 20時
