19、美しい物には毒がある ページ19
▽▲
異変に気がついたのは、黒子であった。
Aや兵達の様子がどこか虚ろになっている。ブツブツと誰かの名前を呟く者や頭を抱える者もいた。
確実に様子が可笑しい事に気がついた黒子は、その事をエーミールに知らせると、大した驚きを見せず「そうですか、」と静かに零した。
「支障はありません。ロイノー村に近づいている証拠です。」
ロイノー村に着けば、虚ろな顔をした人達はわらわらと群れるように1本の樹に集まった。そのままの状態で動かなくなり、次第に倒れていく。
何が起こっているのか分からず、エーミールに問いかければ彼は、静かに、と釘を刺しながら説明し始める。
「…やはり、この村に呪いでは無く、幻覚作用がある。それが、皆さんの行動に関係しているんです。」
え、それ大丈夫？心配になった黒子は、Aの元へ足を運ぶ。いつも気だるそうな目をしているが生気のあった目は、どす黒く何かがどぐろを巻いているようだった。
ブツブツと何かを呟いており、耳を澄ませれば「待って、置いてかないで」とうわ言を行っている。
小さな子供が母親を探すような、胸を掻きむしる様な声をボソボソと出している。
−昔の話で良くは覚えてはいないが、彼女には膿んだ心の傷がある事を思い出す。
そう言えばその時は、よくAの父が宥めていた。無愛想で無口な彼女の父は、力強く彼女を抱き締め「帰ってくるよ」と優しく呟くのだ。
何故、今この話を思い出したのか？分からない。でも、黒子はAが父を呼んでいる気がした。
「Aちゃん」
キュッと彼女に抱きつくと顔面を殴られた。
え、いま感動的なシーンじゃね？殴る事ないじゃん?!とムキになってきた。意地でも抱き着いていると、ピタリと暴力が止む。
顔を上げればいつものやる気の無い、訝しげな顔でこちらを見ていると思えば彼女は吹き出した。
ひいひいと言いながら笑う彼女に安心し、笑みがでたが気持ち悪がられた。
周りを見れば倒れていた人達も数人立ち上がり首を傾げている。
しかし、起き上がらない人の元に行けば、彼らは息絶えており冷たくなっていた。
Aもこの様になっていたのかも知れないと考えるとゾワッと、冷たいものが背中を伝った。
19、美しい物には毒がある
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きな粉大使(プロフ) - 白さん» コメントありがとうございます。なかなか主人公がムキムキしている小説がないので書いてるんですが、好きと言ってくださりテンションうなぎ登りです…！ (2020年2月16日 16時) (
レス) id: 816a82456a (このIDを非表示/違反報告)
白 - とても面白いです。筋肉ムキムキの女の子好きなのでこの作品すごく好きです。 (2020年2月16日 14時) (レス) id: ad3a81de86 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きな粉大使 | 作成日時：2020年2月9日 7時
