女はいつだって本気で恋をするものなのです。 (ページ8)

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7話ページ8

誰かが残業してるんだったら
明かりがついてようがどうでもいいんだけど。

前に消し忘れて帰った人がいて。
朝の集まりの時に凄い怒られたんだよね。
連帯責任だー！とか言って。
長々グチグチ嫌味を言われそうになった。

その時は櫻井さんが上手くとりなしてくれて
事なきを得たから良かったけどさ。
また同じことがあるのは勘弁。
確認くらいはするべきだよね。

廊下を進んで行って、明かりが
ついている問題の部屋の前までやって来た。

チラッと中を覗いて見たら。

(あ、茅野先輩だ。)

そういえばここは。茅野先輩の部署だっけ。

茅野先輩のデスクの上には
資料が何冊か積み重ねられてて。
パソコンもつけっぱなし。

そんな状態で。茅野先輩は眠っていた。

残業中に疲れて居眠りしてしまったようだ。

こんな遅くにこんな所で
寝てたら風邪ひいちゃうよ。

｢かやのせんぱ…｣

起きてください。そう言おうとして。
私はようやく部屋にいるのが
茅野先輩だけではなかったことに気づいた。

思わず反射的に死角になる位置に逃げる。

部屋の奥から歩いてきたのは…。

……櫻井さんだった。

部署が違うのに。なんでここに…？

櫻井さんは自分のスーツの
上着を茅野先輩の背中にそっと掛けてる。

その重みで一瞬先輩が身じろぎしたけど。
そのまま小さく寝息をたてて眠っていた。

茅野先輩を見つめる櫻井さんの顔。

愛しい人を大切に想うような。
でも悲しい、切ないって訴えるような。

そんな表情にも見えて。

それは昼間の噂を意識しすぎた私の
思い込みなのか。それとも真実なのかなんて。
私には区別がつくはずもなくて。

でも。ただ単純に。
残業に付き合ってもらって。
上着を掛けてもらえるような。
そんな距離感でいられる茅野先輩が羨ましかった。