鬼舞辻ルート ページ44
『……痛いのとか、苦しいのとかもうやめてくれる?』
試すように掛けたその言葉に、鬼舞辻はブチギレるかと思ったがそんなこともなくそいつはすんなりと応えた。
「嗚呼、御前が逃げぬのなら。」
『もう閉じ込めたりとか、束縛はしない?』
「嗚呼、御前が他所の男に目移りせぬのなら」
『ただ、ただ普通に私を愛してくれるの?』
「嗚呼、御前が私を変わらず愛してくれるなら」
笑えてくるくらいには何とも歪な愛。
今思えば逆に私のような能無しに何百年も執着していたこいつの心の持ちように驚かされる
『私にしてきたこと、許すわけじゃない』
『家族を殺したこと、何回も死にかけさせたこと』
『痛かったこと苦しかったこと』
『なんにも一秒足りともこの先一生忘れない』
『でも、』
「まどろこしい。何が言いたい、結局私の物になるということだろう」
『こいつ…』
「だとすれば一生手放すつもりはない。貴様が死んでも尚、な。拒否権は無い」
先程まで弱気だったのが嘘ように傲慢な発言をするこいつにはもう慣れるしかない
生憎私は、鬼になりきれない出来損ないなので情が深い。
長い間本当は独りで、永遠と思われる時間と闘ってきたこいつの事を思うと何かに縋りたくなる気持ちも分からなくもないと、思ってしまったのだ。
もう、ひねくれた男に目をつけられた運の悪い女だと思うしかない。諦めるしかない
そもそも、こいつから逃げられる訳もないのだから。
結局受け入れてしまうしかないのだ
そうだ。あがけば足掻くほど、鬼舞辻はひねくれていく
「因みに、何故突然心変わりをしたか言うてみろ。御前は私を殺したいほど憎んでいたはずだが?」
『…うーん、』
『何百年も変わらないその激重愛にそろそろ応えないと罰が当たる気がした』
「…ふ、ふはははは!罰が当たる、だと?御前は鬼だぞ!」
『いや笑いすぎだろ』
「ははは…はぁ…なかなかに面白い事を言う。やはり御前は私を飽きさせぬな」
同情、なんて言えるはずもない。
それに私もこの何百年もの追いかけっこにはもう疲れた。
それ以外に何かあるとするならば、何だろう。
この先にいつか鬼舞辻と居る理由が見つかることがあるのだろうか
それが見つかる日がいつかくるなら。
「A、愛しているさ、ああ、何度でも言ってやろう」
手をさし伸ばしたのは果たしてどちらか分からない
私か、こいつか。それは最後まで分からない。
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m - 初コメント失礼します。鬼舞辻推しとしては素晴らしい作品だなと思いました。そして、夢主ちゃんが泣き虫な点もこの作品の良いところだと思いました。これからも、作者様が明るい気持ちでこの作品に戻って来てくださることを願い、応援しております。 (2023年2月19日 1時) (レス) @page45 id: 6abbe396c0 (このIDを非表示/違反報告)
らいむ - 不死川さんオチを恵んで・・・ください・・・ バタ(倒れた) (2022年12月29日 15時) (レス) @page45 id: 7852438752 (このIDを非表示/違反報告)
美穂(プロフ) - 途中で終わっていて寂しいですてんまた更新されるのを楽しみにしてます (2022年8月6日 21時) (レス) @page45 id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
thmrt1214(プロフ) - お話が更新されていて、とても嬉しいです! (2021年11月18日 12時) (レス) id: 92e3ef3143 (このIDを非表示/違反報告)
こたちゃん信者(プロフ) - むいくん、小芭内、天元様のオチを見てみたいです! (2021年8月18日 15時) (レス) id: 74c0c321e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2019年8月10日 20時