鬼舞辻ルート ページ43
「……もういい、もう疲れた。貴様に期待とやらをするのは」
「はは、どこまで私を追い詰める気なのか底知れんな」
そう投げやりに言い、強く強く自らの拳を握っていた。
少し血が滲んでいるのも、気づいていないようだ
眉をしかめ、これ以上ないくらい悔しそうな顔をする
それは鬼の大将らしからぬ、嫌に人間らしい顔だった。
何だか一瞬、本当に一瞬それがとても哀れで、可哀想に見えたのは、気の所為なのかはたまた、
『私に、直接その気持ち、伝えたことないでしょ』
ふと、喉から飛び出た声は笑えるくらい震えていて
いつもなら「弱者らしい声だ」と馬鹿にされるところだが、今は違う
「…何を、言っている」
『その、狂ったような気持ち悪いくらいの愛を、私は一度も、お前の口から聞いたことない』
『この何百年もの間、一度も』
『それなのに、応えろ応えろって可笑しい話でしょ』
『毎回毎回痛いことばっかで本当「愛してる」
ぅえ、と思わず素っ頓狂な声を出してしまった
一度も聞いたことがないその言葉は驚くほど私の耳にすんなりと入ってきて、混乱する。
対して鬼舞辻はと言うと、何も恥ずかしげがないという様子で私を見つめまたも「愛してる」と真っ直ぐに言う
『…な、!?』
「…こんなものを言ったところでハナから貴様は応える気が無い癖によく言う」
「だから無理矢理にでも従わせる方法を取ったまでだ。無理矢理にでも、な。」
『……っえ!?それで私この何百年も苦しめられて死にそうな思いしてたの!?』
こいつは馬鹿なのか?そう思わずにはいられなかった。
多分心は読み取られているので、これも伝わってしまっている
後で死ぬかもしれない
しかし今はそんな事より、この鬼舞辻という男は最初から私に応える気が無いと踏んで、こんな事をしていたのだという事実に驚愕して口が開いたまま閉じない。はやとちりにも程がありすぎるだろ普通に。
私が鬼舞辻を最初の最初から嫌いなわけがない、その無理矢理にでもという手段こそが自身を死ぬほど憎い存在にさせたのにこいつは気づいていない。
なんだかもう、阿呆らしく思えてきた。
『本当に、馬鹿な鬼』
「なんだと?」
分かりやすく怒りをむきだしにして私を見つめる。
この何百年、その怒りにずっと振り回されてきた。
本当はこいつ私の事死ぬほど嫌いなんじゃないかと疑った事も何度だってあった
でも、本当は愛し方が分からなかっただけだったのか。
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m - 初コメント失礼します。鬼舞辻推しとしては素晴らしい作品だなと思いました。そして、夢主ちゃんが泣き虫な点もこの作品の良いところだと思いました。これからも、作者様が明るい気持ちでこの作品に戻って来てくださることを願い、応援しております。 (2023年2月19日 1時) (レス) @page45 id: 6abbe396c0 (このIDを非表示/違反報告)
らいむ - 不死川さんオチを恵んで・・・ください・・・ バタ(倒れた) (2022年12月29日 15時) (レス) @page45 id: 7852438752 (このIDを非表示/違反報告)
美穂(プロフ) - 途中で終わっていて寂しいですてんまた更新されるのを楽しみにしてます (2022年8月6日 21時) (レス) @page45 id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
thmrt1214(プロフ) - お話が更新されていて、とても嬉しいです! (2021年11月18日 12時) (レス) id: 92e3ef3143 (このIDを非表示/違反報告)
こたちゃん信者(プロフ) - むいくん、小芭内、天元様のオチを見てみたいです! (2021年8月18日 15時) (レス) id: 74c0c321e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2019年8月10日 20時