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百三十四話 ページ35

『いった、い…』

風呂から上がって、Aの傷に薬を塗っている。
怪我ばかりのAのために胡蝶によって特別に調合された塗り薬はよく沁みるらしい。

「ここ、深いな」

『…縫うしかないね』

肩の辺りに深く開いた傷。
相変わらず、Aの体には古傷が多い。

「俺がやってやる。痛かったらこれ噛んでろォ」

渡した手ぬぐいを咥えて呼吸で痛みを逃がさせる。

『フー、ふっ、フー』

涙目になりながら必死に痛みに耐えていた。

『ッ…ふう、…いたッ…ふぅ』

「あとちょっとだァ、頑張れ」

『〜〜ッ』

声にならない声で首をフルフルと振ったA
不謹慎極まりないが、その顔が情事に及んでいる時の顔を連想させた。

「っ、こっち見んな…」

『んぅ…っ?』

頼むから、声を出すな。

集中して縫い続けて、終わった頃にはドッシリと疲れた。


「終わったぞ…」

『ふぅー…、ありがとう』

大きく息を吐いたAの額はうっすら汗ばんでいた。

『痛くて冷や汗かいたの久しぶりだよ』

ケロッとしたAをみて無性に腹が立った。
俺がどれだけの思いで理性を抑えたと思ってんだ。

『はぁ疲れた、寝よ?』

いそいそと布団に潜り込んだAの布団を勢いよく剥いだ。

『んぇ?!なにしてんの?』

「…ふざけんな」

『え…んっ』

半ば無理やり口付けをすればジタバタと暴れるAの腕を押さえつけて動きを封じたが抵抗をやめない

『んんっ、実弥、きょうは、むりっんむ』

涙目で訴えられても逆効果だとはコイツは知らない
柔らかい唇に夢中になる。

『実弥、まって、ッ』

グッと肩を押されてハッとする。
あと少しで抑えが効かなくなりそうになっていた。

「最後までしねぇよ」

『…うん』

「なに物足りなそうな顔してんだ」

『しっ、してないもん!』

「ククク、怪我治ったらたっぷり可愛がってやる」

『…すぐ治す』

「あァ、すぐ、な」

もう一度唇を奪うと嬉しそうにAは笑った。

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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

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