検索窓
今日:19 hit、昨日:36 hit、合計:230,738 hit

百十四話 ページ15

下弦討伐任務当日


『あ、いたいた。実弥、こっち』

「おォ」

山の麓で実弥と落ち合い、最後に作戦の確認をする。

『私は北から回り込むから、実弥は南からお願い』

「分かった。見つけたらすぐ鴉を飛ばす」

『うん。気をつけてね』

「お前もな。これ以上傷、作んじゃねぇぞォ」

トン、と治ったばかりのおでこの傷を指さした。

『実弥こそ』

ニヤリと笑った実弥は瞬きの間に消えていた。

__
____
_______


鬼の捜索開始からしばらく

「獅子柱様!北西に隊士の亡骸が!」

私の先に山で捜索をしていた隊士に声を掛けられた。

『っ、なんて惨い…』

血を吸われたのか、血色感を失い、シワだらけになった皮膚。

『風柱に鴉を飛ばして知らせて、他の隊士達は辺りに仲間の鬼がいないかの捜索と警戒をお願い』

「承知致しました」

…近い、鬼の気配が濃い。

「「いやァァ!!」」

『悲鳴!?』

声の方へ走れば、鬼に捕まる女隊士の姿が見えた。
あの子は何度か任務で会った、顔見知りだ

その子は鬼に首元を噛みつかれていた。鬼はジュル、と音を立てて隊士の血を吸い込んだ。

「ッ…ハッ…獅子柱…様ぁ…たすけ…!」

絶望に満ちた顔でこちらへ手を伸ばす。その姿をみて、全身の血が沸騰したように熱くなった。

『クソ鬼が、離せッ…!』

鬼に斬り掛かると、隊士を投げ捨てて後ずさった。すかさず隊士を抱えて距離をとる。

『あなた、意識は?』

「はっ、はっ、はっ、…」

まずい、呼吸が乱れてる上にひどい失血だ。
急いで治療しないと死ぬ…!

『大丈夫、私が守るから』

「ハァ、獅子柱…様」

『他の隊士がもうじき来るから、ここで身を低くして隠れていて』

木陰に移動させると、隊士は小さく頷いた。


『そこの汚いザコ鬼。私の部下に手を出すとは今すぐ死にたいようだな』

鬼の目には“下弦の仁”と印されていた。
コイツだ。直に実弥も嗅ぎつけて合流する。

鬼「貴様…俺が十二鬼月と知ってるのか?」

一気に増した殺気に少しばかり身体が震えた。
大丈夫、武者震いだ。言葉で自分を奮い立たせろ。

『知ってる。その汚い面を血まみれにしてやる。そこで指くわえて待ってろ…!』

鬼「随分汚い言葉をつかう女だ」

『だれかさんに似たのかな…』

まただよ、また実弥の顔が浮かんだよ。
いつも私に勇気をくれてありがとう。

鬼「お前の血もすぐに飲んでやる」

『お前の頸が先に飛ぶだろう、覚悟しろザコ』

鬼「…俺の機嫌を損ねるとはいい度胸だ」

百十五話→←百十三話 *



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (270 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
424人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。