四十二躍 会いに行くのに大層な理由なんてない ページ41
「…姉上、何で土方さんがココにいるんですかィ」
「総ちゃん…、もしかして怒ってるの…?」
ミツバは弟の様子に僅かに気が付いたのか心配そうに表情を伺う。一方沖田は俯いていた顔をその人物・土方に鋭く向けながら再びはっきりと云う。
「…別に怒ってやせん。ただ俺ァ、何でココにコイツがいるのか訊いてんでさァ」
だが、その言葉はミツバに告げているのか土方に告げているのか、ミツバには分からなかった。
そして、それまで沖田とミツバのやり取りを黙って見ていた当の土方は急に立ち上がったかと思うと何も答えず沖田の横をすり抜けた。筈だったが…
「待てよ、土方」
土方の身体は沖田が出したいつもの間延びした声質とは程遠いワンオクターブ低い声によって止まった。沖田は睨みを効かせながらゆっくり土方の背中を振り返る。
「何も答えず勝手に帰るんですかィ、アンタ」
相変わらず沖田はどすのきいた声音を変えず、未だ背中を向けたままの彼に試すような口調で云った。ミツバの方は何か只事じゃないことを感じ、慌てて沖田を止めようとする。
「総ちゃん、やめて!十四郎さんは何も悪くないの。ただお見舞いに来てくれて…」
「…お前の言う通りだ。俺は別に何か用事があってコイツに会いに来たんじゃねェ。深い理由がある訳でもねェ」
ミツバの言葉を遮るように口を開いたのは土方だった。沖田とミツバはずっと押し黙ったままなのだろうと思っていた為、同時に目を見開く。
僅かにカーテンから覗く淡いオレンジ色の夕陽はその隙間からそっと3人の影を照らすだけだった。
「俺はただコイツの何の曇りもねェ笑いヅラを見に来ただけだ」
「十四郎さん…」
「……」
振り向きざまに少し二人に笑いかけながら云ったその言葉にミツバは心打たれたのか少し頬を赤らめた。沖田は土方の曇り一つないその揺るぎない真意を聞いて再び下を向いた。
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一方神威に無理矢理引っ張られながら信女は複雑な気持ちをぐるぐると胸の内に感じていた。
何故だかこんな軽い気持ちで彼女の見舞いに行ってはいけないという気がしてならない。病院への道のりは縮んでいく一方だが、どうも向かっていくにつれモヤモヤした気持ちが増していく。
信女は胸元の上着のブレザーをギュッと握りしめた。
「もうちょっとかな、総悟のお姉さんがいる病院。案外元気だったりして」
「…神威、本当に行かなきゃいけないの?」
本当に彼が興味本意だけで彼女に会いに行きたいのか知りたかった。
四十三躍 最後のオチは大体目に見えてる→←四十一躍 最も神威らしい単純な考えは聞いて呆れる
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白玉(プロフ) - 面白すぎる..さすがプリン!!ww (2017年10月1日 8時) (レス) id: d7b0293ef7 (このIDを非表示/違反報告)
プリンちゃま(別垢)(プロフ) - みかんさん» みかんさん、ありがとうございます!『面白い』と評価して下さってマジで嬉しいです!!これからも応援ヨロシクお願いします★ (2017年4月8日 20時) (レス) id: 5afe51ca08 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - とっても面白かったです!沖田と神楽の所が特に面白いです!これからも更新頑張ってください!応援しています! (2017年4月8日 19時) (レス) id: 7cb491045b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:交差点プリン | 作成日時:2017年3月31日 18時