九躍 去年の秋の話 2 ページ9
「総悟…⁉」
沖田は全身黒尽くめの男と何やらもめていた。…いや、あれはもしかして…
信女は沖田の名を呼び、彼の元へ行こうとする。
だが、彼女の華奢な腕をつかんだ力強い手がそれを許さなかった。
「神威離して」
「ダメ。行って何のメリットがあるの?女の信女じゃ余計危ないに決まってる」
いつもニコニコ笑ってるくせにいつにも増して神威は滅多に見せない真剣な表情で信女を止める。
そんな神威にすこしドキッとするも、今沖田が置かれている状況を改めて考える。しかし、女の信女が突っ込んだところで事が収まるとは思えなかった。
逆に自分が危険な目に合う確率が増えるだけだ。
…と、深刻な空気が流れていると背後から舌打ちが聞こえた。
「…チッ俺は別に参加したいわけでもねェのによォ」
「…晋助?」
めんどくさそうに頭を掻き、声を出したのは高杉であった。高杉の意外な行動に信女は内心驚きを隠せなかった。誰よりもやる気がなくて、こういう事に巻き込まれるのが一番嫌いなくせに、ぶっきらぼうだが最終的に相手に手を差し伸べる。
ーーそれが、高杉晋助(このバカ)だ。
「…神威。あの黒尽くめの野郎、大体検討つくよなァ」
「そうだね〜。アイツたしか…春雨高校のモブだヨ。勹狼番長のイヌッコロ」
「クッ、やっぱりなァ。…俺がヤツの相手になる。相手にもならねェが」
「晋助、本音出てるヨ」
「…だからそれまで今井に指一本触れさせんじゃねェぞ」
「当然でしょ。俺を誰だと思ってんの」
高杉は沖田と男に近づくと不敵な笑みを浮かべ、沖田に話しかけた。
「オイ、何一人で面白そうな事してんだァ沖田」
「…別に面白くもクソもねェっての。何しにきたんでィ高杉」
「き、貴様高杉ッ!?ど、どうして貴様が…!」
黒尽くめの男は高杉の姿を見るなり、急に怯え出し声が裏返っている。
高杉は口角を深くし、
「ソイツに用があンだよ。お前ェはとっとと会計済ませてあいつらのとこ行け」
「…生憎俺も用があるでィ。オイ、黒いオッさん。とっとと出しちまった方がいいと思いやすがねェ俺ァ」
「だ、だから俺は何も盗ってねェって言ってるだろ!」
「へぇ、じゃあそこから覗く可愛らしい財布は何ですかィ…?」
「…ッあ!?」
「明らかにオッさんが持ってたら、恥ずくて自分のアイデンティティも傷つけるハメになりやすぜ?それでもアンタはそれを自分のだって言い切るんですかィ?」
沖田の中でドS心が疼き、どんどん男は調教されていた。
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白玉(プロフ) - 面白すぎる..さすがプリン!!ww (2017年10月1日 8時) (レス) id: d7b0293ef7 (このIDを非表示/違反報告)
プリンちゃま(別垢)(プロフ) - みかんさん» みかんさん、ありがとうございます!『面白い』と評価して下さってマジで嬉しいです!!これからも応援ヨロシクお願いします★ (2017年4月8日 20時) (レス) id: 5afe51ca08 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - とっても面白かったです!沖田と神楽の所が特に面白いです!これからも更新頑張ってください!応援しています! (2017年4月8日 19時) (レス) id: 7cb491045b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:交差点プリン | 作成日時:2017年3月31日 18時