黄色い花束を君に・ARS【３】 (ページ10)

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１１０:出立ページ10

ピアスを包むように触れると、暖かい魔力を感じる。翔さんの優しさが伝わるようだ。

あのダンジョンの穴も塞ぎ、智さんが最大級の封印術を使ってくれたので、村もしばらくは安全だろう。

今が出立のチャンスだ。

私でもそれはよくわかる。

魔王を倒すこと、それが人間にとって必要なことだとはいえ、ブラストのみんなに死んでほしくない。

私はジッと和也さんを見た。

『準備はできてますか？

薬は揃えられてますか？

結界用の香は？』

私は矢継ぎ早に問いかける。

「大丈夫だとおもうよ。
翔さんが準備してくれてるし。」

『でも、余裕があるほうがいいですよね。』

「Aは、今まで頑張ってきたんだから、無理しない。倒れるだろ？」

和也さんは、私を気遣ってか大丈夫の一点張り。

逆に私に精霊さん達を手伝いとして残そうとしてくる。

精霊さん達がいてくれたら助かるけど、魔王との戦いに精霊さんの協力は不可欠。ここで飲むわけにはいかない。

倒れたって、別に死ぬわけじゃないのに。あとでどれだけでも休めるのにどうしてわからないかな。

出立が迫るはずなのに、別れがもうそこまできてるのに。

私たちは一歩も引かずに、堂々巡りの話を続けていた。