第六話 雫 ページ7
『よろしくお願い致します』
そう云って千代は探偵社を後にする。
とても善い人たちだったと、千代はそう考えながら微かに笑みを浮かべた。
薄暗い階段を降り、探偵社が入った赤煉瓦のビルを出れば太陽の光が千代を照らした。
どうせならと、千代はヨコハマの街を歩く事にした。
もしかしたら兄に会えるのではないかと淡い期待を持っていたのだ。
緑溢れる公園を通り、中華街を通り、最後に港に着いた。
途中で街にそびえ立つ一際大きなビルヂングが見えた。
数年前に何の建物か教えて貰ったはずだが何故か思い出せなかった。
海特有の潮の香りが辺りに漂い、風が吹く度に強く香る。
海はどこまでも穏やかにキラキラと輝いていた。
その海の色の深さに目を奪われ千代は暫くぼうっとする。
兄の瞳の色に、どこか似ていた気がした。
その考えを振り切るように千代は海に背を向けた。
潮風が彼女の長く伸びた赤髪を揺らす。
ぽたり、
透明な雫が一滴、風に乗って散っていった。
『・・・・・？』
雨など降っていない快晴のはずだ。
千代は自分の目元に触れやっと気がついた。
泣いていた、理由は分からない。
でも、どうしてだか悲しいような気がしたのだ。
『・・・・・？？』
目元をハンカチで拭い、千代は少しの疑問を抱きだからも港から離れていった。
「千代−−−−」
誰かが、懐かしい声の誰かが自分を呼んでいた気がした＿＿＿＿＿。
日が傾き、ヨコハマの街に夜が訪れる。
何者にも止められない暗闇が。
.
.
.
「千代、絶対に夜のヨコハマには来るな」
いつの日か、兄様が云っていた。
まだヨコハマの地をよく知らなかったは私は何故だと訊いた。
兄様が云うには夜のヨコハマはマフィアの時間で危険らしい。
その話を訊き、私は問いた。
『兄様は大丈夫なのですか？』
千代の兄は珍しく悲しげな瞳をして云った。
「嗚呼、俺なら＿＿＿＿＿俺なら大丈夫だ」
あの時の兄様はどんな表情をしていたの？
.
.
.
その問いに答える人物はいなかった。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ジュリさん» コメントありがとうございます。なかなか浮上できませんがこれからもよろしくお願いします。 (2017年11月5日 16時) (
レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - 作者さんのペースでいいですから、更新がんばってください！ (2017年11月5日 12時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RAIN@元アラジンlove | 作成日時：2017年9月23日 20時
