第五十二話 名前 ページ4
ぽろぽろと少女の瞳から涙が零れた。
『やっと らくになれる』
泣きながら少女は心底安心したように笑みを浮かべる。
「君 名前は・・・・・?」
森がそう訊けば少女は小さく『"ミシェーラ"』と答えた。
「じゃあミシェーラちゃん
君は何処の国からきたんだい?」
森は少女の手を両手で握り締め訊く。
『わからない』
小さな声でそう返ってきた。
「判らないか」森は困ったように呟く。
これじゃあ国に返してやる事もできない。
「君は両親の元に帰りたくないのかい?」
ビクリと肩が大きく震えた。
そろそろと目線を上げ、諦めたように逸らす。
『どうせ かえれない
おかあさんたちは きっと___』
『ころされた』少女はそう涙を零しながら云った。
「そうか___」
森は困り果て少女から視線をずらした。
視線を移した先、そこには机が有り本が積まれている。
其の本を見て、森は小さく言葉を発した。
「___"淳"」
『淳・・・?』
言葉を反復するようにして少女は続ける。
森は一番上に置いてあった本を取ると少女に見せた。
其の本の著者の名前として"石川 淳"の名が綴られている。
「帰れないんだったら私の元にいなさい
君に新しい名と温かいご飯と寝床を与えよう」
本を寝台の上に置き、森は少女の頭を優しく撫でた。
少女は躊躇い乍もおずおずと其の大きな手に自身の手を重ねる。
『石川 淳・・・____』
何回もそう呟き、少女は嬉しそうに目を輝かせた。
『もりさん』
舌っ足らずに少女は云う。
『ありがとう』
其れが彼女にとって精一杯の誠意だった。
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そしてその数年後。
石川 淳と云う新たな名を与えられた淳は齢十四にして森とポートマフィアの
その名はヨコハマの黒社会において恐れられ、恐怖に陥れる。
決して動じる事が無く、冷淡な事で有名になった彼女には昔の純粋な姿など存在しなかった。
戦果を上げていく淳の姿を、森は笑みを浮かべながら見ていた。
この時、既に淳は森の操り人形となっていたのだ。
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彼女が自分の過ちに気が付くのはそれから4年後の事だった。
ある人物との出逢いが、彼女の考えを変えるのだ。
そんな事も露知らず、彼女は今日も手を染めていく。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» いえいえ、大丈夫ですよ。 (2018年5月11日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
無断転載禁止 - 私の勘違いでご迷惑をお掛けしましたすいません (2018年5月1日 7時) (レス) id: ad49824d41 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» アイビスペイントにて描きましたので一応証拠として写真を一時的にあげておきますね。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» 本垢なら「とっちー」という名前のはずですが・・・。 (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» それは私です。本垢か文スト垢かどちらのイラストを見たのかは分かりませんが「雨雫」という名前ですよね? (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨雫 | 作成日時:2017年4月11日 15時