第三十六話 視線 ページ37
其の日、ボーダー隊員たちは戦慄していた。
ボーダーのロビーにて、笑顔を浮かべ乍ら大股で歩く銀髪の女性と其の女性に半ば引き摺られにこにこと笑う蓬髪の男性。
言わずもがな其れは淳と太宰で或る。
其の場にいたボーダー隊員たちの視線が二人に集中していた。
『太宰君 確り歩いてください』
何処か裏が有りそうな笑みで彼女がそう云えば、其れは其れは面倒そうに太宰は眉を下げた。
「えー 面倒だし 厭だよ」
大の二十歳を越えた大人が云う
周りから冷ややかな目が向けられる中、二人のやり取りは続く。
『厭だとかそう云う問題では有りません
本当に国木田さんに言い付けますからね』
外套を引っ張り乍ら彼女は笑みを消し彼を睨んだ。
然し、大して彼には効果が無く「しない癖に」と云われる始末。
淳は太宰に甘い。
其れは自他共に認めていた。
此れが元来の自分の性格なのだから仕方の無い事だろう、其れが彼女の考えだ。
此れでも数年前迄は冷酷さで有名で或ったし、今考えてみればあの頃はこうして笑みを浮かべる事も少なかった。
矢張り
淳ははたと考え頸を横に振ると、考え直すように今だ引き摺られたままの太宰の脛を思い切り蹴っ飛ばした。
「痛い!痛いじゃないか淳!」
大袈裟に痛がる彼を『煩いです』の一言で黙らせ彼女は溜息を付いた。
・・・脛を蹴ったのは只単なる苛立ちからの八つ当たりで或る。
コツコツと歩く度に聞こえるヒールの音と引き摺る度に擦れる布の音を聞き乍ら、彼女は深く息を吐いた後口を開いた。
彼女の顔から表情が消える。
『太宰君 そろそろやる気を出してください
君が思っている以上に今回の件は厄介なんですか
ら』
ぴたりと足を止め太宰の外套を手放した。
太宰は「ちぇっ」とつまらなそうに立ち上がり乍ら舌打ちをした後、自分の外套を払う。
其の様子を見つめ、軈て彼女は太宰の手を掴むと足早に歩き出した。
微かに太宰の表情が堅くなる。
「淳・・・」
太宰の言葉を終わらせるように淳は目配せをした。
其の瞳からは何時もの柔らかな光は消え、暗い闇だけが或る。
彼女の瞳を見て考えを理解したのか、太宰は欺くように胡散臭い笑みを浮かべた。
「淳が其処まで云うのだから
私もそろそろやる気を出そう」
にこり、張り付いた笑みを浮かべた太宰を淳は只々暗い瞳で見つめていた。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ミリアさん» コメントありがとうございます。ワートリと文ストのクロスオーバーの話なら考えているのですが銀魂の方は大まかなストーリしか知っていないのでご期待に添えるかは分かりません。なかなか占ツクに顔を出す事が出来ませんがこれからも宜しくお願いします。 (2017年9月23日 18時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く気に入った作品で大好きですもし今後他の作品を作る予定があったらワールドトリガーとコラボかトリップか転生した黒バスかアニメKか銀魂の銀時か高杉の姉か妹の作品が読んでみたいです説明が下手ならすみませんこれからも体調にきよつけてがんばてください。 (2017年9月23日 16時) (レス) id: 14f5017be6 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ひかるさん» コメントありがとうございます。なかなか占ツクに浮上する事ができませんが更新頑張りたいと思います。 (2017年6月17日 22時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる - ウォォォ!続きが気になります。(>_<)更新頑張って下さい! (2017年6月17日 14時) (レス) id: c10de46325 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ふにゃたさん» コメントありがとうございます。更新頑張りたいと思います。 (2017年4月3日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨雫 | 作成日時:2017年2月24日 23時