第三十話 二つの名 ページ31
『太宰君 確り歩いてください』
「厭だよー」
『国木田さんに云い付けますよ』
部屋の外からは二人の声が微かに聞こえていたが軈て太宰の「国木田君だけは止めて!赦して!」と云う声が聞こえたきり、部屋には静寂が訪れる。
「行ったか」
忍田の疲れ切った声が合図と為るように部屋にはざわめきが起こる。
太宰に対する非難の声、其れでも彼を擁護しようとする声。
様々な声が上がる中、城戸は椅子から立ち上がった。
「城戸司令・・・・・?」
鬼怒田は立ち上がった城戸を見て声を上げる。
城戸は忍田たちを一瞥した後、口を開いた。
「今日は此れで終わりだ
各自 自分の仕事に戻るように」
本部最高司令官の言葉は重く、誰も反論を口にしない。
「忍田君」
次々に解散して行く面子を掻き分け、城戸は忍田に声を掛けた。
「君には少し残ってもらう
善いかね?」
「えぇ・・・まぁ 善いですが」
忍田は物珍しそうに城戸を見た後数回瞬きを繰り返す。
"珍しい、城戸さんが私に業務以外で話なんて・・・"
最後の唐沢が此方を見て微かに口を動かした。
"頑張ってください"
彼はそう口を動かしていた。
にこりと営業スマイルを振り撒き唐沢は部屋を出て行く。
プシュッと云う機械的な音と共に部屋の扉は非情にも閉まってしまった。
後に残された此の組織の2トップは只々口を開かず沈黙を貫いていた。
カチコチと忍田の腕時計の秒針が音を立てる。
何の位時間が経っただろうか。
先に口を開いたのは城戸だった。
「忍田君 君は先程の男について如何思う」
先程の男とは太宰の事だろう。
太宰の顔を思い浮かべて忍田は「嗚呼」と頷く。
「太宰 治・・・君の事ですか
如何も何も・・・好青年だと思いましたが___」
あの満面の笑みを浮かべる蓬髪の青年を見て、特に悪い印象は抱かなかった。
強いて云えば少々胡散臭い処だけだろう。
「・・・そうか」
城戸は少し俯いて考える素振りを見せる。
「彼が何か?」忍田は聞いた。
城戸は少し躊躇うと静かに口を開く。
「『太宰』と『石川』と云う名に聞き覚えが或って
な・・・・・」
昔の事を思い出すように何処か遠い目をして彼は云う。
「私が知っている此の名はかつてヨコハマを恐怖に
陥れた名だ・・・・・
ボーダーの存在がまだ市民に知られていなかった頃
・・・
ヨコハマに行った時に私は風の噂で此の名を聞いた」
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ミリアさん» コメントありがとうございます。ワートリと文ストのクロスオーバーの話なら考えているのですが銀魂の方は大まかなストーリしか知っていないのでご期待に添えるかは分かりません。なかなか占ツクに顔を出す事が出来ませんがこれからも宜しくお願いします。 (2017年9月23日 18時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く気に入った作品で大好きですもし今後他の作品を作る予定があったらワールドトリガーとコラボかトリップか転生した黒バスかアニメKか銀魂の銀時か高杉の姉か妹の作品が読んでみたいです説明が下手ならすみませんこれからも体調にきよつけてがんばてください。 (2017年9月23日 16時) (レス) id: 14f5017be6 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ひかるさん» コメントありがとうございます。なかなか占ツクに浮上する事ができませんが更新頑張りたいと思います。 (2017年6月17日 22時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる - ウォォォ!続きが気になります。(>_<)更新頑張って下さい! (2017年6月17日 14時) (レス) id: c10de46325 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ふにゃたさん» コメントありがとうございます。更新頑張りたいと思います。 (2017年4月3日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨雫 | 作成日時:2017年2月24日 23時