【ワールドトリガー】探偵社の銀髪さん。【文豪ストレイドッグス】

第二十七話 三輪と銀髪さん ページ28

迎えに行くと云った手前、取り敢えず城戸たちがいるであろうあの部屋まで行かなくてはならない。

今いる部屋の鍵を閉めると辺りを見渡した。


あの部屋迄誰かに送って貰わなければ・・・・・。


『一度通った道なら"完璧に"記憶しているのですが
・・・・・』


うーんと頸を捻り考え込む。

矢張り記憶に無い。


如何しようと悩んでいると淳の耳は此方へと近付いてくる足音を拾った。

足音の間隔から其れが男の足音だと瞬時に判る。


「お前・・・其処で何をしている」


背後から聞こえる少年の声に淳は振り向いた。

黒い学ランに白いマフラー、鋭く紅い瞳が黒く艶やかな髪に良く栄えている。


「質問に答えろ 其処で何をしている

此処は現在関係者以外立ち入り禁止の筈だ」


少年の狂犬のような雰囲気に少し驚き乍らも大して顔には出さずに冷静な態度で接した。

"関係者以外"詰まり此処にいる此の少年は関係者、と云う事だ。


カーディガンの衣囊(ポケット)から探偵証を出し其れを少年に見せる。


『武装探偵社の石川 淳と申します

貴方の上司で在る城戸様から依頼を受け機密情報
漏洩の件について捜査をしています』


「武装探偵社！？」少年の口から驚きの声が洩れ、微かに其れが表情に出た。

然し直ぐに先程迄と同じような表情に戻る。


「失礼しました

俺は三輪 秀次です Ａ級７位三輪隊の隊長をしてま
す

貴女方の話なら城戸司令から聞いています」


ペコリと目の前で頭を下げる少年に＿＿＿もとい三輪に『頭を上げてください』と云えば三輪は其れに従い頭を上げた。


『三輪様ですね

私の仕事の相方(パートナー)が警戒区域に誤
って立ち入ってしまったようで・・・

出来れば司令官殿の処迄案内して頂けないでしょう
か』


『お願いです』と頼むと三輪は二つ返事で了承してくれた。


「案内します 付いてきてください」


白いマフラーを靡かせ前を颯爽と歩く三輪の背を後ろから見つめ乍ら、淳は只々太宰の無事だけを祈っていた。




.



.



.




「やァ淳 グッドモーニング」


太宰を迎えにきて部屋に入っての彼の第一声が此れだ。

拍子抜け、と云うかあれ程心配していた自分か何だか阿呆らしく思えてくる。


正面に座っている城戸が重々しく口を開く。


「石川君・・・彼は君の知り合いかね？」


城戸の言葉にハッとして淳の顔からは色が失われて行く。


『申し訳ございません！』


物音一つしなかった部屋中に彼女の謝罪の声だけが響いたのだった。

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