はつこいとひとめぼれ。【菊地原士郎】 (ページ38)

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ボーダー正式入隊日4 ページ38

あの白髪の子の常人では有り得ないような身のこなしを見たＣ級の人達は、ざわざわと噂話をしては彼を囲んだ。凄いだとか、何者？だとか。そんな事を一方的に投げかけては多くの人が彼を賞賛した。私は直接見た訳では無いが、1秒を切るだなんておかしいとは分かる。

『1秒以下って何……？？えぐいとかそういうレベルじゃないでしょ』

私は先程トリオン兵を吹っ飛ばしたしたことで精神的に疲れてしまったので、今はベンチに座って休んでいる。攻撃されても死なない。そうと分かっていても恐怖というのは中々拭いきれない様だと改めて実感した。

『はーー…怖かった。この調子で本当にボーダー隊員なんてなれるのかな。』

そういう不安がまた込み上げてきた。

正直、ここまで怖いとは思っていなかった。あの画面越しでの惨事が目の前にあるような気がして、一瞬呼吸を忘れた。それでも、私はなる。なると決めた。私が正隊員になって全員負かすと大口を叩いたではないか。ならそれに正々堂々立ち向かわなければいけない。叶えようと、前進していかなければ。

大きく息を吸って、吐いて。深呼吸を一度して心を落ち着かせる。

大丈夫。私なら出来る。

そうやって自分を鼓舞した。

ふと、こちらに近づいてくる足音が聞こえ、人の気配がしたような気がしてぱっと後ろを振り向く。