25話 ページ26
今日も、銀時と会うのは太陽の照らない夜だった。
肌に張り付くよな暑さに、狂ったように唇を重ねる日も あった。
涼しい夜風に身を当て、ただ黙ってそこにいるだけの日もあった。
銀時と会う夜は、何故だか鮮明に鈴虫の音が聞こえる。
夜が更けた江戸の町に人の声があるはずもない。
まるで、太陽の照らない町に二人取り残されてしまったようだ。
私たちは見た目こそ成長してしまったものの、中身は10年前と変わらない、ただの子供だった。
「A」
「何」
あまり多くは呼ばれたことのないその名に少し驚くも、平静を装い短く返した。
「やっぱなんでもねぇ」
「なにそれ」
ふふっと口元に手を当てて笑うその声さえも、人のいないかぶき町ではよく響いた。
私たちは遅すぎた。
互いの気持ちに気づくのにも、あの日交わした行為がどんな意味を持つのかさえも。
もっと早くにお互いのことを知れば、本当のことに気づけば。
お互いに愛し愛される、幸せな未来もあったのかもしれない。
...なんてことは、正直あまり思わない。
こんな風に何気ない話をして、愛のない最低なキスを交わして。
それでもいいと思える自分がいるのだ。
10年前から変わらず、私はただの馬鹿だ。
86人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2023年1月8日 21時) (レス) @page28 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - kayaさん» そんな風に言ってもらえてとても嬉しいです!至らない点もあったかと思いますが、そう言ったコメントがとても励みになります。ありがとうございます! (2018年8月8日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - なんだか読み終わった後、目頭があつくて、気づいたら涙が出ていました。文章が綺麗な素敵な作品だったと思います。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:けんそう | 作成日時:2018年6月10日 21時