16話 ページ17
もう、彼は白夜叉ではない気がした。
彼より一回りほど歳が小さいであろう二人の少年少女を左右に歩く姿を見て、そう思った。
銀髪の天然パーマも、着物から見える筋肉のついた腕も、何一つ昔と変わらないけれど。
まだ過去に引きずられる私と違って、彼はもう攘夷戦争に囚われた亡霊ではなかった。
お互いの寂しさを紛らわすたびに交わしたキスなんて、まるでなかったみたいに。
...ツウっと一筋の汗が私の首筋を伝った。
「大体な、育ち盛りの男子よりも食べるマウンテンゴリラ抱えて叙々苑なんか行けるわけねぇだろ」
「目の前の美少女に向かってマウンテンゴリラなんて目腐ってるアル」
「もうこんなところでやめようよ、二人とも」
意図して会話を聞いているわけではないのに、段々と近づいてくる彼らの会話は耳に入ってくる。
私は唇を噛み締めて、じっと足元を見て歩く。
銀時と。
銀時達、とすれ違った時。
自分の中で何かが崩れていく音がした。
あと少しで完成しそうな積み木の城が、ガラガラと音を立てて崩れていくように。
馬鹿だ。
私は攘夷戦争からもう何十年も経ったと言うのに、期待していた。
銀時が私の事を覚えていてくれる事を。
すれ違う私を銀時は振り返らなかったし、私も彼の事を振り返ることはなかった。
きゅうっと胸が苦しくなって、私は自然と足を早めていた。
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凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2023年1月8日 21時) (レス) @page28 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - kayaさん» そんな風に言ってもらえてとても嬉しいです!至らない点もあったかと思いますが、そう言ったコメントがとても励みになります。ありがとうございます! (2018年8月8日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - なんだか読み終わった後、目頭があつくて、気づいたら涙が出ていました。文章が綺麗な素敵な作品だったと思います。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年6月10日 21時