10話 ページ11
「しろや__」
白夜叉、と。
彼の名前を呼ぼうとしたのに、それは遮られてしまった。
白夜叉は、私に触れるだけのキスをした。
いつも通り、彼はそれだけで帰っていくはずだったのに。
「な、にして__」
白夜叉は、私を押し倒した。
突然のことに抵抗もできぬまま、私の前には白夜叉の顔があった。
長年使われずに放置されてきた縁側の板は所々歪んでいて、背中が痛い。
白夜叉は、そんな私の心中など知らないとでも言うように、再び唇を重ねてきた。
けれど、今日のキスはいつもと違う。
長くて、なかなか白夜叉の唇が私から離れない。
息が足りなくて、苦しくて空気を求めて白夜叉の胸板を精一杯押した。
けれど、女の私では敵わない。
白夜叉はビクともしなかった。
息が苦しくて、空気を求めるように反射的に口を開けた。
すると、まるでそれを待っていたかのように、彼の舌がするりと入ってきた。
「...んぅ、...ぁ」
声にならない、吐息だけが口から出る。
それから、どれくらい時間が経っただろうか。
白夜叉はやっと唇を離した。
長らく吸えなかった酸素のせいで、少し靄のかかった視界の中に白夜叉の顔が映った。
「白夜叉って呼ぶんじゃねぇよ」
今までどこか遠くを見つめる彼の顔は何度も見てきたが、こんなにも余裕のない顔を見るのは初めてだった。
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凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2023年1月8日 21時) (レス) @page28 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - kayaさん» そんな風に言ってもらえてとても嬉しいです!至らない点もあったかと思いますが、そう言ったコメントがとても励みになります。ありがとうございます! (2018年8月8日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - なんだか読み終わった後、目頭があつくて、気づいたら涙が出ていました。文章が綺麗な素敵な作品だったと思います。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年6月10日 21時