39話 ページ40
力一杯投げたはずなのに、総悟はやすやすと竹刀を顔の前で受け止めて見せた。
「やけくそかィ?
こんな投げやりな手法で俺に勝てるとでも__」
「注意散漫!」
私は素早く総悟の後ろへと周り、背中に一本、回し蹴りを入れた。
私の竹刀を受け取ったせいで、総悟は右と左に一本ずつ竹刀を持ち、両手が塞がっている。
それなりに長い竹刀を持ったまま、素早く後ろを振り向くことは難しい。
どんな天才だろうが、剣豪だろうが、自然の法則には逆らえないのだから。
竹刀が空気抵抗を受け、総悟が後ろへ振り向くスピードが、ほんの少しだけ落ちた。
___ほんの少しで、十分だった。
不意打ちの攻撃に耐えられるはずもなく、総悟の体は前へ倒れた。
けれど、総悟だって簡単にやられてはくれない。
きっと足を一本踏み出して、倒れる前に体制を立て直すだろう。
だから。
それを予測した私は総悟の背中へ飛び乗った。
「おい!?」
強行手段だ。
これはもう剣と剣を交えた勝負だって、なんだってない。
「...俺の負けでさァ。」
私は肩で荒い息を吐いているというのに、総悟は清々しい顔をしていた。
「それでいい。
剣だけが、強さじゃない。
俺たちは剣を振るうためだけに真選組にいるんじゃねぇ。」
私が総悟に馬乗りになるなんて、昔喧嘩したとき以来じゃないだろうか。
私が総悟の背中に乗ってしまっているから、総悟は私の顔が見えないだろう。
けど、それでいい。
泣き顔なんて、何回も見せるものじゃないのだから。
「強くなったな、A。」
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時