18話 ページ19
「悪ィ。」
バツが悪そうに私から目を逸らした。
突然の事に、理解が追いつかない。
唇が触れた瞬間、暖かくて柔らかいものが触れた瞬間の事を思い出すと、顔が赤くなる。
ずっと平行で保たれていた私達の幼馴染、という関係が崩れていく。
けれど、幼馴染以上の関係になることが、怖かった。
さっきまで怒っていたはずの事が、どこか上の空になってしまう。
元からあった色を、後から継ぎ足された黒の絵の具に全て飲み込まれてしまった気分だ。
総悟は男で、私は女。
痛いほど痛感させられたその事実は、私の気持ちをグルグルと掻き回した。
総悟はくるりと背を向けて、廊下の向こうへと歩いて行った。
突然の出来事によって冷水を浴びたかのように急激に頭が冷やされた。
私は、言ってはいけない事を言ってしまった。
「私はあんたみたいにそうやって努力もせずヘラヘラ笑ってる奴が一番嫌い!」
総悟が努力していることなんて、私が一番知っているはずなのに。
呼び止めて、言わなければいけない事があるのに。
その思いが言葉にならない。
口を開けても、出てくるのは乾いた空気だけ。
必死に伸ばしたその手が届く事はなかった。
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時