14話 ページ15
「うん、大丈夫。」
咄嗟に私は顔を下に向けた。
包帯で巻かれた自分の足が目に入る。
茶色いフローリングに妙に生えるその白を見ていると、余計に惨めになりそうだ。
そして、悔しさが、
惨めさが、私の理性を奪って行く。
「総悟、何で私を助けたの。」
言ってはいけない言葉が、口を突いて出てくる。
「総悟が助けなければ、あの時、私は彼処で死ぬことができたのに。」
何をおかしなことを、言っているのだろうか。
助けて欲しくなかったなど、只の子供じみた言い訳に過ぎないのに。
総悟に、生きたくても生きることのできなかった兄弟がいる事を私は知っているのに。
それなのに、私は総悟の前で命を捨てるようなセリフを吐いているのだ。
けれど、抑えきれないものが私の心に存在する器から溢れ出るように、口から言葉がポロポロと出てくる。
たとえそれがどんな理由であろうと、言ってはいけないセリフでも。
「どういうことだよ、それ。」
総悟に胸ぐらを掴まれ、顔を起こされた私はそこで改めて総悟の顔を見た。
言わなくても、見なくたってわかる。
総悟が怒っていることなど。
それでも、止まれないのだ。
悔しさとは、人一人が道を踏みはずには十分すぎるほど歪んだ感情だった。
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時