♛︎episode323＿＿縋る者 ページ33
✘
思いの外帝襟さんとの話に花が咲いてしまって、かれこれ二十分近くはお湯に浸かっていた。
「さすがに温もりすぎたぁ……」
手で風を送りながら大浴場の扉をスライドすれば、塊の白い湯気が漏れてくる。一挙に体が湿って、脱衣場に充満した。
湯冷めしないようにバスタオルで体を素早く拭いて下着を身につけると、冷蔵庫からコーヒー牛乳を取りだす。
「ぷはっ、お風呂上がりの牛乳最高！」
腰に手を当てて、ぐびっと半分飲んだところで洗面台に瓶を置くと、鏡に映る自分の姿を横の角度から見つめてみた。
「(バストアップの効果があるっていうから飲み続けてはいるけど……)」
大きく息を吸い込んだまま仰け反って胸を突き出す姿勢をとったり、両サイドから胸を寄せてみたりする。
そしたらどうだろう、下着越しではあるけれど、綺麗な谷間ができあがった。
「なーんか虚しくなってきた」
喜んだのはほんの一瞬で、鏡に映る滑稽な自分の姿を見たら哀れでならなかった。
自分に向かって吐いた溜息が、さらに虚しさを加速させたのは言うまでもない。
───……
髪も乾かし終えて脱衣場を後にした私は、その足で自分の部屋まで直行した。陽気に鼻歌を口ずさんだりして歩いていると、壁を背にして座り込む人影が見えた。
位置的にそこは私の部屋の前だ。恐る恐る近づいていくと、その人物が誰なのか分かって顔を顰めた。
「玲王？」
私が名前を呼ぶと、膝に埋めていた顔を上げて捨てられた子猫のような眼差しで見つめてくる。
「A……」
「う、っ」
思わず一歩、後ろに引いた。
お風呂場での出来事が不意に頭を過ぎったせいで、頬が火照り、胸が弾んだから。
熱に浮かされた姿を見られたくなくて、こちらを見上げてくる玲王から、ばっと顔を背ける。
「ここでなにしてんの。一応、私の部屋の前なんだけど」
「知ってる」
よく見ると胸の中で枕を抱えてる。──うわあ、嫌な予感しかしない。見なかったことにしよう。
踵を返して歩き出そうと足を一歩踏み出したところで、袖を掴まれた。しかもかなり強い力で。
「一緒に、いたい」
蚊の鳴くような声で告げられた台詞に、はっと息を呑む。
" 見捨てないで " と、縋るように訴えてくるその手は震えていて、血色が悪い目の下には青紫色の隈が滲んでいる。
少しでも目を離してしまえば跡形もなく消えてしまいそうな嫌な儚さを前に、私の顔は苦悩に歪んだ。
(Aじゃなきゃ、ダメなんだ)
♛︎episode324＿＿情緒→←episode322＿＿胸囲
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はもに(プロフ) - 咲夜（さくや）さん» 咲夜さん、初コメ並びに応援ありがとうございます！次回の続編でもご期待添えられますよう精進致しますのでよろしくお願いします❕ (7月15日 15時) (
レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜（さくや）(プロフ) - 初コメ失礼します更新頑張ってください応援してます (7月14日 19時) (レス) id: f2b60f62ba (このIDを非表示/違反報告)
だんごさん。(プロフ) - はもにさん» そんな！。全然！。というかお待ちしています、自分も受験生で多分返事返せない時がありますのでお互い同じですよ！。ソレに夏休みの時はいっぱいお話出来ますか？。 (6月9日 21時) (レス) id: 3c436fb16b (このIDを非表示/違反報告)
はもに(プロフ) - だんごさん。さん» だんごさん、お返事遅くなりすみません。作品を愛読頂きありがとうございます！ぜひ、とお願いしたいところなのですがただ今リアルが立て込んでおりまして、執筆に集中するのが手一杯な状態ですので余裕ができてからお伺いしてもよろしいでしょうか？申し訳ないです (6月9日 12時) (レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
だんごさん。(プロフ) - こんにちは！。いつも作品見てました。そのイラストも全て見てました！。初コメですが失礼します。その毎回幸せに見ています。そのボードに話しかけるのはいいでしょうか？。お話したいです！。 (6月4日 17時) (レス) id: 3c436fb16b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はもに | 作成日時：2023年5月27日 14時
