♛︎episode275＿＿対象 ページ35
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「なあ、A。お前は違うよな」
ねっとりとした玲王の声が耳から脳へと直接流れ込んでくる。
その言葉が頭の中に刷り込まれるような、そんな感覚がした。三つ子の魂、ってやつだろうか。記憶の奥底に沈めても、体は覚えてる。懐かしくも恐ろしい、私にとっては呪いのように聞こえる台詞。鎖が絡みつくような喉の苦しさに思わず顔を顰めてしまう。
「玲王？」
「お前は俺を、一人にしないよな」
鼻を啜るような音が聞こえた。
震えを帯びていった声は存分に涙に濡れているように私の鼓膜に響く。そして玲王は消え入りそうな声で、縋るように言ってきたのだ「嘘でもいいから……言ってくれよ」と。
そこに、いつもの玲王の面影なんてなかった。谷底から突き落とされた彼の心は今、本能的に別の誰かを、縋る相手を探してる。その対象がきっと、私なんだと、そう理解した。
「(泣いて、るの？いや、まさか、玲王に限ってそんなこと)」
──ない、とは言い切れなかった。
だって、体が震えてる。涙と一緒に突き上げてくる呼吸を唇を堅く結んで押さえているような振動が伝わってきた。ジャージ越しに、ぽた、ぽた、と水滴が落ちてくるのも感じる。
私は恐る恐る玲王の背中に触れた。
「(あっ)」
驚くほど熱がこもっていて、熱かった。私が触れたことが引き金になったのか、玲王の身体がさっきよりも小刻みに震え始める。悲しい動悸を聞いた。悩ましい胸の哀れな響きの中に、暫く私はぼーっとする。
こんなに密着してるのに、嗚咽は聞こえてはこない。たぶん、我慢するように泣いてるんだ。はっきり言って痛々しい。今にも壊れるんじゃないかってほど、酷く儚い。
「(玲王が、泣いてる。あの玲王が？)」
私は思わず口を開こうとするが、声が掠れて音にならない。なにこれ。玲王が泣いてる。なんなんだこの感じ。私は目を見開いたまま混乱していた。何故か恐怖していたからだ。汗が吹き出してくる。この状況から目を逸し、今すぐにでも無かった事にしてしまいたい。
「(そんなの、そんなの見たくない)」
玲王が泣いていることが怖かった。納得がいかない。こんなのおかしい、あっちゃいけない、あと何だこれ。何かに追われている、気持ち悪いこの感じ。焦り、みたいな不安。思考が纏まらなくて吐きそうになる。
「(あぁこれ、絶対勘違いされるやつだ)」
震える唇を何とか引き結んで、いてもたってもいられなくなった私は、気づけば玲王の背中を撫でていた。
episode276＿＿間柄→←♛︎episode274＿＿硝子
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はもに(プロフ) - 瑞稀さん» 瑞稀さん、コメントありがとうございます。玲王と凪のすれ違いは見てて辛いものがありますよね…。寵マリはさらに輪をかけてなのでこれからの玲王の行動にも注目して頂けると幸いです！ (2023年4月28日 20時) (
レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - れ玲王〜〜ほんとこのコンビは言葉足らずが、、玲王の精神状態原作の数倍やばそう (2023年4月19日 3時) (レス) @page21 id: 3f4ee46d03 (このIDを非表示/違反報告)
はもに(プロフ) - ヤマシタ恋白さん» ｱ~~~~ヤマちゃんだ！！！ツクからご感想貰えるなんてはもに感激です、、！！お礼を言うのは私の方だよ~~~仲良くしてくれて本当にありがとね、お祝いのお言葉も感謝ですᵕ̈* これからも寵マリ共々よろしくしてくれると嬉しいです💕 (2023年4月14日 1時) (レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
はもに(プロフ) - 青さん» 青さん、お祝いのお言葉ありがとうございます！ここから玲王と神崎の関係値が大きく変わるキッカケになるお話でしたので楽しんで頂けたようでとても嬉しいです。これからもご期待に添えられるよう尽力致しますのでよろしくお願いします🥰 (2023年4月14日 1時) (レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
はもに(プロフ) - 凛香奈さん» 凛香奈さん、いつも真っ先にコメントしてくださり本当にありがとうございます！Twitterの方もフォローしてくださっていたなんて感激です、、！！番外編もご愛読されてると聞き、活力が湧きました！！これからも何卒、引き続きよろしくお願いします‼️ (2023年4月14日 1時) (レス) id: ad43313898 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はもに | 作成日時：2023年4月11日 18時
