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6/14(月) ページ10
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後に,国木田や敦の証言により,遺体の男性は太宰治,女性は山崎Aという事が決定した。
太宰治は,此までにも幾度となく入水,心中等を繰り返してきた為,敢えなく本当に死んで仕舞ったのだということになった。当然と云えば当然だ。
太宰の首の跡については,無理矢理心中させられたAが最期の力で首を絞めたのではないかと推測され,何れにしろ其処まで重要視されなかった。
太宰の遺体発見現場には,かのポートマフィア幹部・中原中也の姿もあった。彼は(見つかるとまずいのだろう)足早にその場を通り過ぎたが,其の顔には喪失と云う文字がぴったりだった。
彼は逃げるように現場から遠ざかり乍ら,
「なンだよ,あんな最期に成る位なら,俺が何時でも殺してやッたのに」
と呟いていたという。
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世界一の名探偵を自称する江戸川乱歩だけが,此の事件の真相を知る。
太宰を熱心に愛しすぎた故,自ら破滅へと追い込んだ,剰りに不憫な少女の事を。
ラムネに入っていたビー玉を意味も無く覗きこみ,乱歩は目を細めた。
断末魔のように雨が降っていた。
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作者名:妃有栖 | 作成日時:2017年6月19日 21時