検索窓
今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:1,030 hit

6/13(火) ページ9

.

私ばかりしあわせな死に方をしてすみません。

水の中は,冷たかった。初夏を越えたとは云え,6月だ。其に,急に降りだした雨の所為か,躰も冷めきっていた。

水に触れた箇所から,じんわりと衣類が濡れていく。濡れた処が素肌にべったりとくっついて離れない。そんな感触でさえも私は楽しんだ。案外,冷静なものだ。

私は人殺しだ。其も,愛する人を殺して仕舞うと云う大罪。今でも,力を入れた両手で触れた彼の首筋の感じを,はっきりと思い出せる。

最期の最後迄,太宰さんは笑っていた。
こうなる事を予想していたように,優しく,ふわりと微笑んでいた。私の目からは人知れぬ涙が流れ落ちた。

太宰さんは倖せだっただろうか。

私ごときの為に其の命を無くして,倖せだっただろうか。

聞いても,彼は答えてくれない。唯,抱き締めた彼の躰が離れることはない。死後の世界迄一緒に居られるだろうか?

先刻迄確と見えていた太宰さんの表情(かお)は,もう見えなくなってきた。だんだんと,酸素が無くなる。思わず息を吸う。
入ってくるのは酸素では無く大量の水だった。

意識が遠くなる。

水の奥底から,声が聞こえた。

『人殺し』
『御前など死ぬ価値さえない』
『地獄に堕ちるがいい』
『其のまま目を覚ますな』

幻聴?其にしたって厭な幻聴だ。死ぬ時位,いい気にさせてくれてもいいのに。

『Aめ。俺が死んだからって他の男と心中なんて赦せねぇ』

目を見開いた。其は待ちわびていた筈の修一の声。怖くなった。厭だ,なんで。

太宰さん,私は貴方と死んで良かったんですか?

6/14(月)→←6/19(火)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:文豪ストレイドッグス , 太宰治 , 太宰治生誕祭   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:妃有栖 | 作成日時:2017年6月19日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。