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手紙が届いた。
如何やら私宛てらしい。
淡い期待を抱いて,封筒を開けてみる。
『山崎A様。
矢張り奥名修一さんはお無くなりに成られて居りました。
此のような残念な報告をさせて戴くのを御許し下さい。
貴女様の御幸せを願って。』
嗚呼,莫迦。
何で
本当,莫迦みたい。
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奥名修一。私の恋人の名前だった。
人一倍正義感が強く,外国の政治や法律に興味を持つような,頭の良い人間だ。
私よりも何歳か歳上で,背も高く頼りになる男だった。私たちは結婚の約束さえしていたのである。
数箇月前,彼は亜弗利加の政治について調べ挙げ,其の紛争を生で見詰めてみたいと云い出した。何を莫迦な事をと止めたのに,修一は其のまま旅立ってしまった。
何も云わずに出ていった修一を赦せなくて私は何日も連絡を取らなかった。
流石に可哀想になって連絡をしてみたものの,返事は無い。気になって知り合いに調べてもらった所,此の結果だ。
莫迦だ。阿呆だ。
私も随分な莫迦で阿呆だが,其に勝る莫迦で阿呆な人間だ。
奥名修一。
せめて別れは云いたかったです。
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作者名:妃有栖 | 作成日時:2017年6月19日 21時