3/27(月) ページ3
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威勢よく饂飩を注文する彼女を,卓上に突っ伏したまま太宰は見詰めていた。そして何を考えたのか,少女の白く細い腕を両手で掴み,こう云った。
「美しいお嬢さん……! 私と心中して戴けないだろうか……!」
直ぐ様"理想"と書かれた手帳が,太宰の頭を直撃した。敦は,良くある事だと呆れ返り,饂飩を啜った。店主は関わりたくないとでも云いたげに,無視を続ける。
「非道いじゃないか国木田くぅん! 私は唯美しいお嬢さんに声を掛けただけだよ」
「初対面の人間に,心中を申し込む莫迦が居るか!!」
敦は饂飩を食べ続ける。店主同様,彼も此の下らない争いには特に干渉したくないようだ。彼女だけが,ぱちくりと目を開いて二人の喧嘩を眺めていた。
国木田と太宰の(無駄な)云い争いは,其れから数分間続いた。つまらない喧嘩だと思った敦には,其は一時間位続いたのではないかと思える程だった。
そろそろ止めなければならないだろうと,止める決意をした敦。だが,彼が口を開く前に,彼以外の人物が二人に話し掛けた。
「心中なんて,面白い方ですね。私,山崎Aと申します。お三方の御名前を教えて戴けます?」
国木田と敦の思考は一時停止した。
_面白い方!?そんな訳ない。端から見れば唯の変人である。其とも何だ,彼女にも太宰と同じような趣味があるのか。
二人の考える事は類似している。
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作者名:妃有栖 | 作成日時:2017年6月19日 21時