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赤い煉瓦造りの校舎。
体育館やグラウンドなどの運動施設は県下一の充実を誇る、桐先高校。
そんな桐先高校の弓道場は十人立という広さ。
冬の積雪に備えた窓付きシャッターなども完備され、一年を通して快適に練習できるようになっている。
その弓道場で、Aと愁は来月に控えている県大会の選抜メンバーを選ぶための方法について、顧問から話を聞いていた。
その方法とは初心者を除く全員が十射ずつ。
その中から学年関係なく男女別に的中上位七名が選手となる。
一度きり。やり直しはなし。
「俺は試合で勝てるやつがほしい。下手なやつ、運のないやつもいらん。」
顧問の言葉に、集まっていた部員は息を呑んだ。
中学時代とは違い、今の顧問は完全実力主義。
弱い人、下手な人は試合に一切出さない。
もちろん参加するからには、Aと愁はレギュラーへの座を狙いに行くつもりらしい。
二人の目は試合で見せる、獲物を狙いに行くそれだった。
その数日後の土曜日16時。
選抜メンバー選別試合。
参加人数は男子三十名、女子二十九名の合計五十九名だ。
計十射の詳細は、五人立の一手坐射を一回、次に四つ矢立射を二回。
一巡目、五人立一手坐射。
参加人数が多いこともあり、これだけでも時間がかかる。
そしてそのまま二巡目に入り、四つ矢立射がはじまる。
Aと愁は一年生のグループで出番が早いため、弓と矢をそれぞれ持ち順番を待っている。
二人は互いに顔を見合わせ、互いの健闘を祈りながら頷く。
一年生の組が射位へと進む。
Aと愁が打起こしをすると、部員たちの目が二人に注がれる。
「やっぱ貴公子と公女様は皆中して当たり前って顔だな。」
Aと愁の立を見ていた部員たちが、各々口に出して言う。
どんな状況でも平常を保ち、自分の射ができる。
これができる人のみが、この桐先弓道部では選ばれるのだ。
結果、二人は皆中を決め現時点で的中本数はトップに並んだ。
『おつかれ。』
二巡目まで終わると一旦休憩になり、Aと愁はいつもの場所に腰を下ろし休んでいた。
愁「A、これいるかい?」
愁はそういうとAに、10秒チャージと書かれたエナジーゼリーを差し出す。
『ありがとう。お腹空いてたから助かる!』
お互い特に会話もせずエナジーゼリーを飲んでいると、千一と万次が近づいてきた。
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作者名:希子 | 作成日時:2023年2月1日 13時