Episode 20 ページ23
「ふぎゃっ」
その瞬間、Aの顔に布がぼふっとぶつけられる。
次いで別の布がAの膝にかけられた。
「お前が俺たちを心配してくれているように、俺たちもお前が心配なんだぜ」
「もっと優しい渡し方があるだろ、承太郎…」
二枚の布は、承太郎と花京院の学ランだった。ポルナレフは「俺もなにか渡せるものがあればなー」と口を尖らせる。
「僕たちは“仲間”なんだ。お互い助け合うのは当たり前だろう?」
花京院が優しく言い聞かせる。
Aはまた俯き、「あ、ありがとうございます…」とだけ呟くと、二枚の学ランを抱きしめる。
__人前で泣くのは恥ずかしいことだ。
分かっているけれど、自然と涙が溢れてくる。
“仲間”という言葉が、Aの心に響いのだ。
「おい承太郎!お前が顔に制服ぶつけっからAが泣き出しちまったじゃねーか!」
ポルナレフが承太郎に向かって叫ぶ。
「えぇぇ?!おい承太郎!まさかお前、レディを泣かせたのか!!」
本気にしたジョースター思わず振り返る。
「うるせぇぞじじい!お前は黙って運転してりゃいいんだよ!」
「酷い!孫酷い!」
孫に般若のような顔で一蹴されたジョースターは、ひーひーと文句を言いながら運転を続ける。
「俺が泣かせたわけじゃ無いよな?」
「ち、違いますよ!はい!」
「もはや脅迫にしか見えないんだが…」
ジョースターに腹を立てた承太郎が、Aを睨むように見る。怯えたような声で返答する彼女を見て、同情の眼差しを送る花京院。
平和な車内。
皆の作り出す暖かい雰囲気は、寒さを忘れさせてくれた。
「到着じゃ!」
一件の宿の隣に、車は停車する。
寝ぼけていた一行はパチッと目を覚まし、降車する。
「ここが今夜泊まる宿か?」
「そうじゃ!」
ポルナレフの問いに、自慢げに答えるおじいちゃん。何となく、ガキ大将に見えた。
宿の中は、至って普通だった。
朝食付きの財布に優しい宿の為、客もそれなりにいた。
「今日は大きな部屋を一つだけ借りる。予算の削減の為じゃ」
予約を済ませたジョセフが、ロビーの椅子に座っている承太郎たちに言う。
「了解だぜ。朝食はここで取るのか?」
立ち上がった承太郎がジョースターに尋ねる。
「そうじゃ。だから明日の七時半にはここに集合するんじゃ」
こっちじゃ、と一行を誘導しながら答える。
…起きられる自信がないです!
心の中でそう断言したAは、密かに誰かに起こしてもらえることを期待した。
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東雲(プロフ) - 海守青空別垢さん» 応援ありがとうございます!頑張ります(*^^*) (2018年9月15日 0時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
海守青空別垢 - 頑張ってください!(^^) (2018年9月14日 21時) (レス) id: b3f5a03222 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 海守青空別垢さん» わあああい!!ありがとうございます!嬉しいお言葉頂きました!これからも何卒宜しく御願い致します(´ー`*) (2018年9月3日 14時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
海守青空別垢 - この作品大好きです!僕もこんな神作書いてみたい(´・_・`) (2018年9月3日 10時) (レス) id: b3f5a03222 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます!そんな勿体ないお言葉を……!ありがとうございます、励みになります( ^P^) (2018年8月27日 22時) (レス) id: cea307c8ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲 | 作成日時:2018年2月6日 19時