ジュウロクワ ページ16
「庵崎さん、単刀直入に言うよ。
こっちに来なさい」
「____」
「浅野君も、それを望んでいる」
「理事長？僕はそんなこと、」
「私の前で隠し事かい？」
「…………いえ」
こっち、とは？本校舎のことか？
「恐らく、烏間先生の考えていらっしゃる通りで合っていますよ」
転入当時はE組に、と許可を得たはず。
今更になって何故連れ戻そうとするのか。
庵崎さんは何も答えない。
「A組が嫌だと言うのならB組でもいい。君の成績なら常にクラストップを保ち続けられるだろう……勿論、理事長の身である私としてはA組に来て欲しい所ではあるのだけれどね」
「…………」
引っ張られる力が強くなる。
俺は表向きの担任であるし、一応今は教師の端くれ。
経験も浅く何も出来ることはないが。
庵崎さんの背中に、そっと手を置いた。
不安な時は人の体温を感じると安定する、と本で読んだことがあったからだ。
彼女も例外に漏れることなく肩の力が少し抜ける。
「？？」
理事長の顔と浅野くんの顔を交互に見る。
すると小首を傾げた。
「庵崎さん？」
「誰？」
「ん？どうしたのかな？」
暫し固まったかと思うと俺の顔を下から覗き込んだ。
「どうした、庵崎さん」
「誰？」
「……浅野理事長と、息子さんの浅野くんだ」
「ふーん」
それだけだった。
まさか、覚えてないなんてこと、
「初めまして」
…………。
「「「…………」」」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「はは、庵崎さんらしいや」
「やっぱり、認識してないってことなんだね」
「じゃあ、私たちの顔ももしかして覚えられてない？」
「かもね」
「っていうか、A組に誘われる位頭良いの？」
「……他校？からの転入生だし、テストは受けたんじゃない？」
「なのにE組に？」
様々な憶測が飛び交う中、僕は一人考え込んでいた。
もし、庵崎さんがA組に行ってしまったら？
折角仲良くなった僕はの記憶まで消されてしまうのか。
生憎今は殺せんせーの触手をイヤホン型にしてスピーカー音量で聞いているから彼女の表情までは見えない。
どんな顔をしているのか。
了承するのか。
僕の頭の中はそれで一杯一杯だった。
「……それで、庵崎さん。どうだい？A組に来る気はないかい？」
「私、は。探してるんです」
＿＿探してるから、E組への編入を希望した
なのに安全を保証されたら困る
貴方の言うきょうしゃ？が何かは分からないけど
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作者名：リン | 作成日時：2018年2月15日 7時
