月と嘘 (ページ19)

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十六話～ベルside～ページ19

その後、シルさんは戻って行った。

「……あの、ルナを、昨日一緒にいた女の子を知りませんか？昨日から帰っていなくて……」

「ああ、あの子かい。いや、知らないよ」

「そうですか……」

「……あの子は店が終わるまでアンタのこと待ってたんだよ。殺気立つアタシらのこと必死で止めてね」

「……」

「あの子にもちゃんと謝っておきなよ」

「はい……」

ルナ……

～～

「ええ!? ルナが帰ってない!?」

「うん……ベル君、何か知っていないかい？」

そう眉を下げ聞いてくる神様。

「すいません……僕には……」

「……そうかい」

～～

あの時、神様は本当に寂しそうにしていた。
僕が言えることじゃないけど……あまり神様を悲しませたくない。

少し暗い気持ちのまま、僕は今日もダンジョンに向かった。

～ルナside～

「ご主人……ただいま戻りました」

「ルナちゃん!! どこに行っていたんだい!?」

涙目になって抱きついてくる主。
どうやら本気で心配させてしまったみたいだ。

「すいません、ご主人……少し帰りたくなくて……」

主には嘘をつけないしつきたくない、でも昨日のことを言う気にはならず、そんな後ろめたい事がどんどんと語尾が小さくしていく。

そんな私を気遣ってか、何も聞かないでくれる主。

「何はともあれ、ルナちゃんが帰ってきてくれて僕は嬉しいよ！」

「ご主人…… ？」

と、私は机の上に紙が置かれているのに気づく。

「あ、ああ！これはあれだよ!! そのっ！」

「クスッ誤魔化さなくていいですよ？無理には聞きませんから」

「あ、あぅぅ……」

適わないという風に頭を垂れる主。
そんな微笑ましい姿に私は優しく声をかける。

「……ご主人、私は大丈夫ですからね」

「え、」

「ベルはもっと強くなれるはずなんです！だから、ご主人はベルを一番に思ってください」

主は目を見開き私に釘付けになる。

「ご主人……いつか、いつか話しますから。少し待っていて下さいね」

「……」

ごめんなさい主……。
混乱している主に心の中で謝る。

「ルナちゃん、無理は、しないでおくれよ？君だって僕の大事なファミリアの一員なんだから」

「ありがとうございます。ご主人……」

やはりこの神(この人)は私をよく分かってくれている。
多くの言葉を紡がなくとも、その人物の事情(言えない事)というものを察してくれる。
それは神だから、とかではなく、ただ単にこの人(主)が私の良き理解者であるからなのだろう。