第九話 異能力双つ ページ9
「何故だ」
「それは……」
……素直に考えている事を云えば、今度こそ確実に機嫌を損ねるだろうなあ……
私が口ごもっていると、芥川さんがゆっくりと口を開き、再び爆弾を投下した。
「……貴様の異能力は、先刻のものだけでは無いだろう」
「………………へ?」
いきなり話題が転換した事と、発言の内容のために、返答にかなり時間がかかった。
返答とも呼べないけど。
「どういう、事ですか」
「……まさか、自分で気付いていないのか?」
私がゆるゆると首を縦に振ると、芥川さんは目を見開いた。
「自分が路地裏で倒れた事は覚えているな」
「……はい」
「……その時、死体を見てしまっただろう」
……死体?
一瞬何の事か判らなかったが、すぐに霞んだ視界で見たあの赤いものが死体だったのだと察した。
「……はい」
「故に、僕は貴様に銃口を向けたのだ」
「……やっぱり向けられてたんですね」
「だが」
「だが?」
「貴様に銃弾は効かなかった」
「……………はい?」
……あの場に居たのは芥川さんで、私がマフィアの殺害現場―――いや芥川さんが銃を持ってたって事は、多分裏切り者の制裁か何かだろう―――を見た事は理解出来た。
そして目撃者である私を消そうとして、銃を撃った事も。
でも、だ。
効かなかった?
銃弾が?
「貴様に銃弾は効かなかった。確かに撃ったが、銃弾は体に触れたあと弾かれた様に割れた」
「割れた……?」
「何発か撃ったが、全て割れていた」
とても信じられない。
其れが顔に出ていたのだろうか。
「……実際、此処に割れた銃弾がある。手を出せ」
いつの間に持っていたのか。
物的証拠を見せてやる、と芥川さんは拳を突き出して、云われた通り出した私の手のひらの上でパッと開いた。
手のひらで、キン、と金属がぶつかり合う小さな音が響いた。
…………
…………本当に、割れていた。しかも機械で割った様に、真ん中を綺麗な断面で。
此の黒い部屋でも、光を受けて鈍く光っている。
「……貴様は異能力を2つ持っている。其の様子じゃ使いこなせてないんだろう。そしてあんな路地裏でふらついていたのだから帰る場所も無いのだろう」
……1つを除いて、全て芥川さんの云う通りだった。
「ポートマフィアに入れば、全て解決出来る」
……この世界で何のあても無い私には、其れしか道が残されていないことを嫌でも察した。
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梓(プロフ) - 二つ結びの人さん» ありがとうございます…!励みになります! (2018年3月31日 10時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
二つ結びの人(プロフ) - こんばんは!!とっっても面白いです!!!この先が凄く気になります!これからも頑張ってください!!! (2018年3月28日 0時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
梓(プロフ) - 碧灯さん» 返信遅れてすみません…!そうです!住野よるさんの「よるのばけもの」をモデルにしています (2018年3月23日 22時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
碧灯(プロフ) - 初コメ失礼します! 質問なのですが、主人公の名前と異能力って 住野よる さんをモデルにしていらっしゃいますか? (2018年3月16日 19時) (レス) id: 391be2aaba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梓 | 作成日時:2017年8月13日 12時