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第三六話 序の逃走劇 ページ37

「Aちゃん」

「A」


相対して立つ2人。


早い答を求められる。

すなわち、探偵社か、ポートマフィアか。


……私には、選べない。



「……中也さん、太宰さん」

私が声をあげると、濡れ羽色と碧の瞳が私を貫いた。


「私は、今から2人に迷惑をかけてしまいます。……ごめんなさい」

2人は訝しげな顔をして私を見つめる。


……こういう、ふとした表情は似ていると思う。

口が裂けても云えないけど。


其の表情を振り切って私は前へ走り出し、中也さんを追い抜いた。


「はぁッ!? おいA!」


後から中也さんの焦った声が聞こえてくるけど、私は足を止めるつもりは無かった。

兎に角、考える時間が欲しい。

其のために、1人になりたかった。


でも、私が彼の場から逃げたら追いかける追いかけない関係無く、2人に迷惑をかけてしまう。

本当に自分勝手だけど、だから予め謝った。

其れでも、許される訳が無いのは勿論判ってる。


でも私には、此の強行手段しか思い付かなかった。




がむしゃらに走る。


耳元で風が鳴く。



行き止まりに突き当たったら、来た道を戻って別の方向に走る。

私が塀など登れる筈が無い。



ふいに、ちらりと後ろを見ると中也さんが遠くに見えた。

「はや、すぎ……っ」

私の事を足が速いなんて褒めてくれたけど、中也さんも大概だ。


此のまま走り続けて、私が勝てるとも思えない。

何処かに身を隠した方が得策だ。


私が辺りを見回すと、すぐ近くの2棟の高い建築物(ビルヂング)の間に、道が出来ているのが見えた。

……彼処だ。


後を確認すると、丁度角を曲がった処だったからか中也さんの姿は見えなかった。


私は、一息に其の暗闇へ飛び込んだ。

第三七話 二番の逃走劇→←第三五話 振り子



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(プロフ) - 二つ結びの人さん» ありがとうございます…!励みになります! (2018年3月31日 10時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
二つ結びの人(プロフ) - こんばんは!!とっっても面白いです!!!この先が凄く気になります!これからも頑張ってください!!! (2018年3月28日 0時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 碧灯さん» 返信遅れてすみません…!そうです!住野よるさんの「よるのばけもの」をモデルにしています (2018年3月23日 22時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
碧灯(プロフ) - 初コメ失礼します! 質問なのですが、主人公の名前と異能力って 住野よる さんをモデルにしていらっしゃいますか? (2018年3月16日 19時) (レス) id: 391be2aaba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年8月13日 12時

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